第127話 心の闇 輝ける絆
レビア様は敵と戦っている。私は敵を弱らせる為、レビア様のに歌っていた。大切に思っている人なのに苦しい思いをする。
何故?ナゼ?なぜ?なゼ?
そう思いながら歌っていたが、レビア様が敵にやられてしまった。
少しよそ見をした時だった。
目の前に、敵が近づいて来ていた。
敵は何かを持っている。
敵が持っている何かは急に目の前で浮かぶと、光を発して私に近づいてきた。
「あたた…かい?」
私はいつのまにか歌うことをやめ、近づいてきた光に触れる。
私の意識は暗い、暗い何も見えない空間に移動していた。
歌わなきゃ…ウタワナキャ…うたわなきゃ…。人を倒すために、敵を倒すために、苦しめるために。
暗い闇の中、私は呟きながらゆっくりと歩み出した。
すると自分の目の前に何かがいた。翅が生えた馬…その姿は少し光っているように見えた。
“せな…”
「誰?私を呼ぶのは?」
“せな、君は…”
初めて聞く声だが、何処か懐かしい感じ。
“瀬那、君の歌はそんな思いをする為にあるのかい?”
「あなたに何がわかるの!」
声を荒げる私。
“僕はずっと聴いてきた。君の歌を…想いを…”
「私のウタ?想イ?」
“君に出会う前、かつての僕はずっと孤独だった”
目の前の魔物はゆっくりと話始める。
“かつて僕は群れからはぐれ、あの森で孤独に暮らしていた。来る日も来る日もずっと…。そんなある日、僕は君の歌を聴いた”
「………」
“何処か淋しそうに歌う君。誰かに気がついてほしい、一緒にいてほしい…そんな想いが伝わってきたよ”
「あっ…」
“君が僕に初めて気がついたら時は怖がっていたね?僕も人と会うのは初めてだったから戸惑った”
話を聞いていると自分の中で何かが溢れてくる、そんな感じがした。
”それから何度か顔を合わせる内に互いに馴れてきた。いつもは遠くから聴いていたからそれを間近で聴けるなんて思ってもいなかったよ”
「あ、ぁ…」
“ある日、悪い人達に僕が狙われた時、君にも迷惑をかけてしまったね。だから僕はそれからは君を遠くから見守ろうと思った。ずっと遠くからだったから微かに聞こえる歌をずっと聴いていたよ”
「ハ……く……」
“うん、嬉しかった。名前をつけて貰った時も、君の歌の可能性を知った時も”
「わ…たし…」
“僕が見守っている間に、君は様々な人たちと出会い、変わっていった。1番は彼かな?”
ハクは首を下げると頭を瀬那の手の届く所までくる。
“君だけじゃない、君の周りも、彼と関わって変わっていったはずさ。その証拠に君の歌に込められていた想いが変わっていったのがわかったよ”
「ごめんなさい…私…」
自分の目から涙が溢れていた。
“また君の近くにいられる。君を乗せることができるようになって嬉しかったよ”
目を細める仕草はまるで微笑んでいるように見えた。
“君の歌は人を傷つけたり、苦しめたりする為にあるんじゃないと僕も思っている”
私はハクの顔を優しく撫でた。
“君は今、常闇の力に囚われている。君だけの力では抜け出せないだろう。それに、これ以上彼にも負担をかけたくないからね。僕の全てを使って君を皆んなの所へ帰すよ”
その言葉がハクとの永遠の別れのように聞こえた。
「待って!ハク!私、あなたがいなくなったら!」
“大丈夫、今の君には頼りになる人達がいる。君の力になってくれる人がいる。それを忘れないで…”
ハクの身体が強く光輝いていく。
「ハクーーー!」
強い光に包まれると、私の意識は遠のいていく。
最後に聞こえたのは“ありがとう”という言葉だった。
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