第126話 不完全ながらの勝利

それは他者を寄せ付けない勝負だった。

グラウンドに駆け付けた仲間たちがただ見ているだけしかできない、そんなレベルの勝負が行われていた。

上級の魔法の応酬、それが目の前で行われているのだ呆気にとられていたのは気がついたウル達もであった。



ウル「なんて勝負だ…」



その言葉に頷くしかない皆を他所に、戦っている錬は焦っていた。

時折、走る激痛。まだ、完全に身体が治りきっていない状態での魔法の行使。それは彼自身の身体に負担を強いる行為。以前よりも負担は少なくなったとはいえ、今の彼には意識を失わせるには十分なのだが、気合いでかろうじて意識を失わず戦っていた。



レビア「どうした?反応が鈍くなってるな?あぁ、そうだったな。そういえば体調が万全でなかったんだったな?」



攻撃の手を緩めることなく、レビアは更に激しく攻撃を続ける。

だが、錬もそれに対応するかのように鋭く捌いていく。

闘いは熾烈を極め長く続いていた。

周りからは手数の多いレビアの方が圧倒的に有利に思われていたが、錬の一発、一発は確実にレビアを捉えていた。


“クッ!このままでは!”レビアがそう思った時だった。



錬「動きが止まったぞ」

レビア「しまっ!」



錬の鋭い一撃がレビアの急所を捉える。

たまらず、レビアは吹き飛び後方にあった木々へ衝突し崩れ落ちる。

錬はレビアが立ち上がらない事を確認すると、その場に膝をつく。


「「錬!」」


仲間達がおぼつかない足取りで近づいてくる。

どうやら、自分たちが闘っている間に瀬那が再び歌を歌い皆の動きを阻害していたようだ。



渉「ごめん兄さん…」

紗菜「ごめん、錬…」



口々に謝ってくる。

それを手で制し、首を振る。



錬「……今は……」



錬は皆が何か言いたそうにしていたのを遮ると、エリゼと瀬那の方をみる。

エリゼは持っていたハクの魔核を歌っている瀬那に近づけようとする所だった。



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