第125話 ハクの願い

吹き飛んだレビアを見た錬は目の前のハクの傷を再び見る。



錬「ハク…お前…」

エリゼ「あの時の…私みたいに…その魔物を治せば…」



起き上がったエリゼはウルとは違う魔族に治癒ちゆを施していた。



錬「いや…無理なんだ…。魔物と人間とでは魔力の質も流れも違ってくる…簡易的な処置なら大丈夫だけど重症となれば…」

ハク「ヒ…ヒン…」



徐々に弱っているハクだが錬を見つめるその瞳にはまだ力があった。



錬「ハク…お前まだ彼女に何か伝えたいのか?」

ハク「ブルル…」

錬「ハク、お前の傷の治癒ちゆは難しい…このままではお前は死んでしまう。何かを伝えられないまま…。だけど、お前が生き残る方法は1つだけある…だけどその方法をもってしてもお前が彼女に意思を伝えられるかはわからない…それでもこの可能性に賭けるか?」



ハクはジッと錬をみつめる。



錬「わかった…お前の意思、確かに受け取った」



錬は昔やったようにあることを行った。

そう、対象者の身体を魔核まかくへ変化させる錬金魔法だ。

錬は光に包まれていくハクを少し悲しそうな表情で見つめていた。



゛ありがとう…これで彼女に伝えられる…゛



魔核まかくに変わる寸前で錬の頭の中にそんな声が聞こえた気がした。



エリゼ「魔物を…魔核まかくに変化させた!?」

レビア「き、貴様!今何をした!」



いつの間にか立ち上がったレビアが今の様子を見て驚いていた。



レビア「ま、まさか貴様もを扱えるのか!い、いや…以外にあの魔法を扱えるはずが…」



レビアはブツブツと喋り始める。



錬「お前のことなんてどうでもいい…。彼女を返してもらうぞ!」

レビア「ふん!私もあれから少しは腕を上げた…今日こそ貴様を殺す!」



互いに魔法を放つ!

放たれた魔法同士は相殺し消える。



レビア「いちいちしゃくに障る!反対属性の魔法を使い相殺するなど!」

錬「それはお互い様だよ…。エリゼ!」



錬は持っていた魔核をエリゼへ放り出す。



エリゼ「えっ!ちょっと!」



エリゼは魔核まかくをキャッチすると再び錬とレビアの戦いを見る。

すると、エリゼの脳内に声が聞こえた。


゛僕を彼女の所へ…゛


周りを見渡すエリゼ、だが声の主は見つからない。

ふと、持っている魔核まかくがポゥと薄く輝くのを感じた。



エリゼ「まさか…」



瀬那の方を見ると、レビアが少し離れていることに気がつく。

レビア自身も錬との戦いに集中しているのかそれに気が付いていない。



エリゼ「今なら!」



エリゼはウルとアスモスが落ち着いているのを確認し、瀬那に向き直る。



エリゼ「待ってなさい!瀬那!今、目を覚まさせてあげるから!」

瀬那「・・・・・・・」



瀬那はただ正面を虚ろな瞳で見つめているだけだった。

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