第118話 目覚め

フワフワした夢のような空間…いつまでもい続けたい気分が支配していた。

そこは何も感じる事のない、何も考えなくても良い空間。

そこでじっと目を閉じて、ただ揺られる感覚に身を委ねるだけ。



錬「・・・・・・・・」


「このままでいいの?」



誰かの声がする。

それは懐かしい声。



錬「・・・・・・・」


「今のお前は目覚めても身体的にキツイだろう…だが…」



今は聞けない大切な人たちの声。



「「このままでは全て失うぞ(わ)」」



その声と共に何かが自分に流れ込んでくるような気がした。

同時に何か悲しい気持ちと、誰かのすすり泣く声が聞こえた気がした。



「行ってあげて、手遅れになる前に…」

「このまま、ここにいるのもお前の勝手だ…。だが、お前なら無理をしても行くだろう?」




2人の声が消えると同時に目を覚ます。

そして、近くにかけてあった服に着替えると少年は白い病室の窓から飛び降り、導かれるようにとある場所へ向かった。




「大変!信条錬さんが病室にいません!」

「そんな、外傷はほとんど治癒できたけど、内部的にはまだ半年ほど療養が必要なのに!それに脳だって!?」

「急いで探さなければ!」

「まだ遠くには行ってないはず…。とりあえず、女王様にも報告して里の皆にも協力してもらいましょう!」



錬が去った病室ではパニックが起きていた。

エルフの里に捜索命令が下った後、1つの光がシャングリラ大陸から飛び立つのをエルフ族とドワーフ族のほとんどが目撃していた。




ソアラ「絶対無事に帰ってきてね…。お願い、ルナ…錬さんを守ってあげて…」



飛び立った光を見てソアラは1人手を組み祈っていた。





飛燕コックピット内


錬「状況はわかるか?」

飛燕:断片的ではありますが、情報が入りました。どうやら、日本皇国のある場所で戦闘が起きているようです。それに対応している部隊がニエドのようです。

錬「飛燕?何か言葉が流暢になってないか?」

飛燕:以前の戦いの際、私にも何か変化があったようです。ですから、先ほどマスターより呼ばれた際にオートでマスターの元へ行くことができるようになりました。

錬「おかげで、色々と助かったよ…」

飛燕:しかし、マスター。マスターの身体状況的には戦場へ赴く事はおすすめしません。

錬「心配してくれるのか?」

飛燕:はい。できれば引き返して医療施設に搬送したいと思っています。

錬「…心を持ったって事か?」

飛燕:心という概念はわかりません。ですが、マスターを失いたくないという事ははっきりと言えます。

錬「凄いな…そこまでプログラムした覚えはないから進化したってことか…」



感慨深い表情を浮かべる錬。



錬「それで、俺の高校まではどれくらいで着く?」

飛燕:おおよそ1時間程です。マスターが操縦をしなくても私単体で動かせますが、いかがしますか?

錬「できるだけ、体を休めたい…頼めるか?」

飛燕:了解しました。操縦を自動に切り替えます。目的地に着きましたら起こしますので、マスターはゆっくりお休みください。

錬「あぁ…頼んだ…」



そして、錬は力尽きたように眠りにつく。

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