第112話 共鳴する心
再び歌い始めた瀬那。
先ほど歌った時に感じたこと…それは錬が抱える闇だったのだろうか。
歌いながらそんなことを考えていると、ふと周りの音がしなくなっているのがわかった。
瀬那は目を開けるとそこは暗い空間が広がっていた。
瀬那「ここは…?ハク?」
先ほどまで乗っていたハクもいない。そして、自分が先ほどまでいた場所ではないということは確かであった。
瀬那「地面に足がつく…歩けるけど、ここは一体…」
どんどん歩いて進んで行くが、歩けど歩けど何もない暗い空間が続く。
だが、進むにつれ何かが聞こえてくるのはわかっていた。
瀬那「誰?」
「…レ…ハ…」
声が聞こえる方に歩いていく。
瀬那「誰かいるの?」
「オ…ハ…ヲ…」
近づくにつれ鮮明に聞こえてくる声。
そして、暗い空間にぼんやり見える影。
瀬那「錬…さん…?」
そこには見たことのある人影が頭を抱え地面にうずくまっていた。
「オレハ…トンデモナイコトヲ…」
人影に近づいた瀬那は声をかける。
瀬那「錬さん…大丈夫ですか?」
「オレハ…マタ…ウシナウノカ…。イヤ、コンドハジブンノテデ…」
瀬那は声をかけたが、錬はそれに気が付かない様子で呟いていた。
そして、瀬那は地面に膝をつくとうずくまる錬の背中に寄り添うと、そっとその手を錬の前に回し抱き着く体制になる。
瀬那「私は大丈夫です。ハクも無事です。ウルさんが助けてくれましたから」
「ダケド、オレハ…」
瀬那「確かに危なかったですけど、結果は助かりました!」
「‥‥」
瀬那「どうして自分を責めるんですか?」
「オレハ、モウ、ウシナイタクナカッタ…。オサナイコロニチカラヲナクシテ…」
そして錬は語り出す。
幼い頃鍛錬して手に入れた力は、幼馴染や兄弟達を守るために契約した力の代償で使えなくなってしまったこと。
そして、代わりに手に入れた力も結局は大切なものを守ることができなかったことも。
どんどん変わりゆく情勢に自分がどんどん力を欲していった結果、魔法装甲に頼る道につながったこと。
だが、その結果も今は自分が守ろうとしたものさえ奪おうとしてしまったことで今の自分を信じきれなくなって全てを捨ててしまおうと思っていること。
それを瀬那に吐き出すように語る。
瀬那「私は…錬さんに感謝してますよ?」
「カンシャ…?」
瀬那「そうです。あの時ライブ会場で私は死ぬ覚悟もしてました。あの時の私は自分に自信をもてず全てを否定してました。だからその想いが私の歌に反応し、て魔物が寄って来るんだって後で錬さんに聞かされて納得しました。でも、あの時に錬さんに出会って無かったら今私はここにいませんし、詩織さんや遥とも仲良くなれなかったと思います…」
「……」
瀬那「だから、全部否定しないでください。少なくとも私はアナタに救われたんです!」
「!?」
¨そうだよ。私もその救われた1人だよ?だから、顔を上げて?¨
錬の正面にぼんやり光る人影が現れる。
顔を上げる錬。
「ル…ナ?」
¨そう、私だけじゃない…エルフの里の皆も。ドワーフの里の皆も…錬に協力してくれる人たちは皆錬に救われた!¨
瀬那「皆の所へ戻ろう!錬さん!」
「オレハ…俺は!」
立ち上がる錬には、背中に瀬那…前にはルナが抱き着く。
すると眩い光に包まれると暗い空間はなくなり、瀬那は現実に引き戻される。
瀬那は現実に戻る前に¨錬を支えてやってね¨という声を確かに聴いていた。
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