第110話 止まらない装甲

マーモのマグネスが動かなくなったのは一度ニエドに戻ったウル達もモニターしていた。



瑠衣「今、敵の魔法装甲が沈黙したと同時に他で暴走していた魔導装甲も沈黙したそうです。ですが…」

ウル「錬!もう止めろ!敵はもう倒したんだぞ!」


ニエドから錬に呼びかけるが反応はない。

モニターでは変わらず残った手で殴り続ける飛燕の姿が映し出される。

そして、振り上げた際に手首がダラんとなっているのを全員が目撃した。

その手には赤い何かが付着しているのをウルは見逃さなかった。

瑠衣も一瞬目を逸らす。おそらく、ウルと同じものを見たのであろう。

他の仲間達も通信で止めるよう呼びかけてはいるがやはり反応はない。


ウル「もう少し艦を近づけられないのか?」

レビック「さっきやったさ。だが、今飛燕に近づくと艦の機関が異常を知らせる警告を発するんだよ」

スール「おそらく、飛燕が今引き起こしている現象が艦の動力を奪おうとしているのだと思います。先ほど近づいた際に急速に艦の魔力の減りが確認されましたから」

ウル「つまり魔力が飛燕に吸収されたって事か?」

スール「いえ、おそらくですが…。この艦の魔力変換をする前のマナ全てを飛燕に持って行かれたせいだと思います。この艦はただでさえ魔力を消耗するのが早いのでそれで回復するはずの魔力が全て持って行かれたせいだと考えます…」

ウル「だったら俺が黒鋼で止めに行く!」



ブリッジから出ようとするがレビックがそれを止める。



レビック「黒鋼も他の装甲よりは損傷は軽微だがまだ魔力補充も整備も終わっておらん!このまま行っても共倒れだ!」

ウル「だが!」

瑠衣「レビック氏の言う通りです。今は整備班を信じてお待ちなさい」

ウル「クッ…」



神妙な面持ちでモニターを見ながらそう話した瑠衣を見てウルは従った。

モニターには未だ止まる様子もない飛燕が映し出されていた。

すると格納庫の方から通信が入る。


「大変だ!さっき魔物と一緒に運ばれた嬢ちゃんが「錬さんの所に行かないと」って外に出ようとしてるんだ!」

瑠衣「彼女は?今通信できますか?」

「は、はい。少々お待ちを…」

瀬那「瑠衣様!私を行かせて下さい!」

瑠衣「なりません!先ほどは綺さんやウルさんが守ってくれたからいいものを…今は誰もあなたを守ることのできる人はいません!このまま行かせては危険が伴います」

瀬那「でも、私は行きます!」

瑠衣「ならせめて、黒鋼の修繕が済んでからでも…」

瀬那「それだと遅いんです!それだと…錬さんの命が…」


少女の目には涙がこぼれていた。


瑠衣「…何か感じたのですか?」

瀬那「はっきりとはわかりません…。でも、今錬さんから聞こえる声が…少しずつ小さくなっていっているんです…」

瑠衣「声?」

瀬那「私にもハッキリとはわかりません…。先ほどまで強く聞こえていたのに今は弱くなってきているんです!」



瑠衣は周囲の人に瀬那が言っている音や声が聞こえるのかをアイコンタクトで確認するが全員首を振る。

ただ1人はコツコツと瑠衣の側にくると瀬那に向かい話す。



詩織「行ってきなさい」

瑠衣「エリゼさん!何を!」

詩織「彼女の事は私が責任をとります。瀬那、何か確信があるのね?」



詩織の問いにコクリと頷く。



詩織「お願いします。もう一度彼女を行かせてくれませんか?このままでは本当に取り返しの付かなくなるかもしれません…」

瑠衣「貴方も何かわかるのですね?」

詩織「私も推測の域ですが…。後ほどお話します…。ですので今は…」



瑠衣は詩織の表情を見てそれが真実だと悟ると、瀬那に無理しないよう言い許可をだす。

許可を得た瀬那はハクに乗ると艦から飛び出し飛燕へと向かった。

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