第109話 暴走する者

ウルは信じられない光景を見ていた。

先ほどまで全員が苦しめられた敵が、一方的に攻撃され手も足も出ない状態でいたのだ。

その一方的に攻撃している味方も先ほどから周囲の事をお構いなくちぎって、邪魔になった魔導装甲を投げていた。



ウル「一体何が…」



先ほどから呼びかけているが未だ応答がない錬に起こっている変化に戸惑う。



黒鋼:魔法装甲になってわかったが…。今、錬の乗る飛燕に異常な程マナが集まってるようだ。

ウル「何だと!それがあの力を出している事につながるのか?」

黒鋼:わからん…。あの状態は我々の自爆の魔法に酷似しているように思える。しかも、アレでは魔力が集まり過ぎて機関も限界を超えて爆発してもおかしくはなさそうだが…。

ウル「それじゃ、何とかして止めないと!」

黒鋼:いや、不思議な事にその気配は微塵もない。むしろ、その力を制御しているようにも感じる…。しかし、飛燕は簡単な魔力の制御しか出来ないはずだ。今の錬には冷静な対応は不可能、今あの魔法装甲に起こっている出来事は理解できん。

ウル「止める術はないのか!」

黒鋼:あやつが敵を倒して止まる事を祈るしか今は方法はない…。とりあえず今は他の皆の救出を優先しよう。

ウル「そうだな…とりあえず今は負傷者をニエドに運ぶしかないか…」



ウルはギリギリ動く黒鋼で気絶している遙達をニエドへ運び始めた。



グシャ!グシャ!



飛燕はどんどんマグネスの覆っている魔導装甲を削っていく。いや、潰していく…。

飛燕を退けようと残った腕で攻撃したのだが、飛燕も残っていた刀をピンポイントでマグネスの腕に命中させその機能を失わせる。

残った左足でばたつかせ動くも飛燕はものともせず胴体へ攻撃を繰り返す。

遂には魔法装甲の本体へ届く寸前になっていた。



グシャ!グシャ!


マーモ「ヒッ!」



先ほどから余裕がなくなったマーモはグシャという音が響く度、ヒッという悲鳴をあげていた。



マーモ「先ほどまで私が…この私が優勢だったはず…。なのに…なのにこの様は!この様は何なのだぁぁぁぁー!」



目の前の飛燕を見つめマーモは絶叫する。



マーモ「やはりコイツは…コイツは我々の計画の障害になる…。かくなる上は…」



マーモはパネルを開き自爆魔法を展開しようとした。

しかし、その行動は次の瞬間には無に帰す事になる。


グシャ!と音がした後、バキッという音が響きマーモの意識は真っ暗になった。

そう、マーモはコックピットごと飛燕に潰されてしまったのだ。

先ほどまでバタバタ足掻いていたマグネスは遂に動く事を辞め静かに地に横たわった。



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