第108話 一方的な戦い
ウルは信じられないものを見ていた。
今自分がやられそうになった時に復活した錬の飛燕。
ウルも装甲から放たれる殺気に一瞬ひるんでしまった。
しかし、驚くべきはそこからだ。錬の飛燕がマーモの乗るマグネスに突っ込んでいった。そして、自分達より倍の大きさになったマグネスを装甲の拳だけで軽く数キロ程吹っ飛ばしてしまったのだ。
ウル「凄い…」
黒鋼:あれだけ質量の差があってあそこまで吹き飛ばせるものなのか…。
先ほどまでの戦闘でここにいた戦力でびくともしなかった相手が簡単に吹き飛んだのだ。
例えて言えば自転車がトラック相手に突っ込んでトラックを吹っ飛ばすことをして見せたのだから両者の驚きは当然であった。
黒鋼:だが…様子がおかしい…。
ウル「錬、聞こえるか?錬?」
通信で錬に呼びかけるが、応答がない。
錬の飛燕は黒鋼を素通りしマグネスへゆっくり歩みを進める。
立ち上がったマグネスは近づいてきた飛燕にその巨大となった右手で殴りかかる。
そして、飛燕もまたその巨大な拳に対して自身の左手で殴り返す。
ガキンと大きな音と共に何かが壊れる音、軋む音が聞こえる。
マグネスに乗るマーモはバカな事をしたなとほくそ笑むが、次の瞬間にはその笑顔が消える。
バキっという音と共にマグネスの巨大な腕は地に落ちる。集めた魔導装甲の残骸だけでなく、マグネスの腕ごとだ。
だが、飛燕の方も無事ではなく、左腕はだらんと下がって動かないようであった。
マーモ「!?」
マグネスが右腕を失ったことで急激にそのバランスが崩れる。ぐらつくが辛うじてその立ったままの体制を維持する。
そのスキを見逃さず飛燕は追撃を加える。
マグネスの右足に飛燕は持っていた刀を突きさす。今まで表面を切り裂く程度であったはずなのだが、面白いように深く刺さっていく。
そして、覆っていた魔導装甲の残骸でなく、マグネスの足を貫いたのか右足を覆っていた魔導装甲の残骸達は突然崩れていく。引き抜いた刀はバキッという音を立て折れる。
とうとうバランスを保てなくなり、たまらず轟音を響かせ地に伏すマグネス。
更に倒れたマグネスに追撃をかける飛燕。
錬「許さない…許サナイ…ユルサナイ!」
流れ込んでくる力と感情…それを上手く制御できないでいた。
必要以上に集まる力を錬は飛燕に向けて流れさせ、限界以上の力を発揮させていた。
そのおかげか、片手にも関わらずマグネスが覆う魔導装甲を殴るだけでトマトを潰すように簡単にベコベコと潰していた。
だが、その代償は少しずつ錬を侵食していく。
そう、錬の眼や鼻から血が流れ始めてきたのだ。
搭乗者の異常を知らせる飛燕の警告は錬の耳はとは届く事はなかった。
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