Another15 決勝の前に
決勝の前日、錬は船の甲板にでて景色を眺めていた。
錬「……」
「明日は決勝ですね?」
錬「君か…」
錬の後ろにいつの間にか瀬那が立っていた。
瀬那「ごめんなさい…1人になりたい…ですよね?」
錬「構わないよ?ちょっと外の空気吸いたかっただけだから」
瀬那「あの…変なこと聞いていいですかね…?」
瀬那は下を向きながら錬に問いかける。
錬「ん?」
瀬那「錬さんは今好きな人とか…いるんですか?」
突然の瀬那の質問に錬は少し困惑した。
錬「好きな人って…恋人になりたい人ってこと?」
瀬那「そ、そうです!」
錬「そうだな…今はこれと言っていない…かな?」
瀬那「そうなん…ですか…。もしかして、忘れられない人がいるんですか?」
錬「そうなのかも…しれないな…」
錬はそう言って自分のはめているグローブの宝石を触る。
瀬那「紗菜さんっていう方ですか?」
錬「紗菜?もしかして綺から聞いたのか?」
瀬那「はい…」
錬「紗菜は…大切な幼馴染だよ。昔から一緒だったから恋とかそんな感情はないかな…。でも、あいつはそうは思ってないっぽい節があるけど…」
瀬那「もしかして…ルナさんっていう人なんですか?」
錬「‥‥。誰から聞いたんだ?」
瀬那「ごめんなさい!」
ルナの事を口に出した瞬間、錬の雰囲気が変わったことを察して瀬那は謝罪をする。
錬「ごめん、俺も悪かった。どうせ、ソアラ辺りから聞いてたんだろ?」
瀬那「はい…。エルフの里にいた時にちょっと…」
錬「ルナは俺の初恋…だったのかもしれないな…」
錬はゆっくりと語り出す。
ルナとの出会いと彼女と過ごした日々。
よく彼女も歌を唄ってそれを側で聞いていたこと。
そして、彼女との別れ。
別れの際にした最初で最後のキス。
錬「いつまでも引きずっている訳にはいかないよな…。って泣いてるのか?」
瀬那「ご、ごめんなさい…」
錬「ほら、ハンカチ」
瀬那「ありがとうございます…」
涙を拭いた瀬那の頭にポンと手を乗せる錬。
錬「まぁ、今はちょっと気になる人はいるかもしれないな…?」
瀬那「だ、誰なんですかっ?」
錬「内緒だ!さて、そろそろ休む時間だ!夜更かししないでちゃんと休むんだぞ?」
瀬那「えっ?ちょ、ちょっと錬さん!」
そう言って錬は艦内に入っていく。
瀬那「行っちゃった…」
少し俯く瀬那、そんな彼女に向かって話しかける人物がいた。
「フフフッ。素直じゃないのは相変わらずだね…」
瀬那「えっ?あなたは?いつからそこに?」
「ごめんね。驚かせて。マナがね少し力を貸してくれたの…長くは持たないみたいだから簡潔に伝えるね」
瀬那「えっ?」
「錬はね…あなたが心の底から思い出る歌が好きなんだよ…。だからね、いつまでもあなたの歌を聞かせてあげて?そして、私がマナから教えられた歌をあなたにも…」
突然現れた少女は瀬那の胸に手を置くと、そこから何かが伝わってくる感じがあった。
瀬那「これは…」
「もう、時間みたい…。錬のことお願いね?」
そう言うと目の前の少女は消えていく。
闇夜に消えた少女は、どほとなくソアラに似ているような気がしたのだった。
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