第100話 輝きの歌(ホーリーソング)
錬たちは苦戦していた。
対する相手の気迫が凄いこともあり、人質がとられているとう可能性が相手にあるため勝つこともできないからだ。
負けると日本だけじゃない、ドワーフやエルフ達も奴らに好き勝手されてしまう可能性があるから敗退もできない状態なのだ。
瑠衣たちが情報を集めてはいるようだが、未だいい情報はないとのことらしい。
どういうことか、瀬那と遥も船からいなくなったとの連絡があったが、自分ちで出て行ったようだとのことから捕まっていないことは確かなようだが、そちらも心配の種だった。
錬「さて、いつまで持つかね…」
対峙している魔法装甲を目の前にぼやく。
すると、会場内だけじゃなく、広域通信で知っている声が聞こえた後、歌が流れてきているのがわかった。
錬「この歌は!」
錬は空を見上げた。
遥「ちょ、ちょっと!大丈夫?落ちない?」
瀬那「遥は待っててもよかったんだよ?」
遥「そうは言っても、瀬那が心配だったし…」
瀬那「ありがとう!さ、この辺でいいかな?止まってハク!」
試合会場とモニター会場の丁度真ん中あたりの空の上で待機したハク。
瀬那「あの!聞こえますか?」
瑠衣『瀬那さん!一体何処に!』
瀬那「すみません、勝手に出て行ってしまって!お叱りは後で受けますので…今は私に協力してくれませんか?」
瑠衣『…何か考えがあっての事なのですね?』
瀬那「はい!」
瑠衣『わかりました、あなたを信じましょう。それで、私たちは一体何をすれば?』
瀬那「今通信しているマイクで会場全体に私の歌を届けたいんです!」
ロアナ『会場だけでいいの?』
瀬那「できれば魔法装甲や魔導装甲に乗ってる人たちにも届けたいんです!」
ロアナ『わかったわ!数分頂戴!あなたの歌を届けられるようにするわ!』
瀬那「ありがとうございます!」
そして数分後。
ロアナ『準備オッケーよ!今から切り替えるから合図したら全体に届くわ』
瀬那「ありがとうございます」
そして合図があり、瀬那は全体に呼びかける。
瀬那『皆さん!これはもう試合じゃありません!戦うのをやめて下さい!これ以上は無駄な血が流れるだけです!』
会場全体が見渡せるところにいたが、今の呼びかけでも魔導装甲は止まることなく動き破壊を続ける。
だが、魔法装甲だけは一度手を止め放送に耳を傾けていたのだった。
逃げ惑う人々はそれどころじゃなく阿鼻叫喚の嵐であったため瀬那の放送に気が付く人はいなかった。
瀬那『~~~~~~♪(お願い!皆!私の声を、私の思いを聴いて!)』
それは透き通るような歌。
傷つき倒れている人たちもたちまち傷が癒えていく程だった。
それだけでなく、いままで悲鳴を上げて逃げ惑うだけの人たちも足を止めただ彼女の歌を聞いた。
いつの間にか落ち着きを取り戻す人々、そして協力して瓦礫に埋もれた人を助けていく。
今まで暴走していた魔導装甲も何か糸が切れたようにその場に崩れ落ちる。
錬「やっぱり凄いなあの子は…」
先ほどまで殺気が迸っていた相手からそれがなくなったのがひしひしと感じ取れた。
そして、詩織から突然通信が入る。
詩織『今色々と会場を回ってみたわ。今あの子の歌が始まった辺りで試合会場中央の場所に何か揺らめくものが感じられたわ!おそらく何か外部から遮断するような強固な結界と光学迷彩みたいなものかもしれないわ。送った座標はおおよその所よ。生半可な攻撃じゃ結界は破れないかもしれないけど…』
錬「ありがとうございます!聞いていたな?相手の装甲騎手さん?」
「あぁ…」
錬「それじゃ、ちょっとしたお芝居に付き合ってもらうぞ?」
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