Another2 親友
ドタバタした小学生時代を送り直した自分だったが、未だ魔法や幼馴染の変わりように釈然としないでいた。
魔法がすべて…以前の世界では考えられなかったことだ。この世界では魔力が少なければ不利…今の自分に少し絶望してもいた。
そんな折、中学に入学してから同じクラスに魔力が全くないが、筆記ではトップクラスの成績をもつ魔法の実技では全くと言っていいほど結果を出せていない生徒がいた。
自分も他の人よりも魔力が低いためなんとも言えないが、少なくともそいつよりはマシだなと見下していた。
先生達も実技の時にそいつがいなくても特に気にしている感じではなかったから、当然一番魔力が低かった俺も例外ではなかった。
幼馴染の綺はその度に俺を気にして抜け出したことを怒って心配してくれる。
だが、以前の世界でのことがあるが故に素直にその言葉を受け入れられずにいた。
悶々と考えながら学校の屋上へ来ていたがそこには先客がいた。
??「なんだ、お前も抜けだしてきたのか?」
琳「・・・・」
??「いいのか?結果残さないと最低評価だぞ?」
琳「うるせーよ!お前には関係ないだろ!」
??「まーた、お前の幼馴染から口うるさく言われるの俺も嫌だから。授業でてくれない?」
琳「お前に何がわかるんだよ!」
俺はわかったような感じで言ってくるこいつに苛立ち、ついには殴りかかっていた。
だが、そいつには拳が一切当たらず、少ない魔力で練った魔法でさえもすべてかわされた。
琳「はぁ…はぁ…なんでかすりもしない…」
??「修行が足らんからだろ?」
琳「意味がわかんねーよ…」
ドタリと屋上の床に寝そべる。
寝そべった自分の隣に奴は座る。
暫く互いに言葉を交わさずいた時だった。
「オイオイ、ここは俺たちの場所だぜ?」
「下級生が来ていい所じゃないぜ?」
「おい、こいつ最近チョーシのってる信条って1年じゃね?」
以前の世界ではあまり関りのなかったような人達であったが、今の自分はこの先輩たちに対してイライラをぶつけたい気分であった。
琳「信条…手を貸せよ…」
錬「えー、めんどくさいからパス」
琳「お前っ!」
「なんだぁ?俺らにたてつくつもりかよ?下級生にはわからない魔法で痛めつけてやろうか?」
錬「先輩達、喧嘩する相手間違えたんじゃない?」
「何だとこらぁ!?」
それを、皮切りに喧嘩が始まった。
先輩は頭上に巨大な氷の塊を作り出す、おそらくあれで押し潰すつもりなのだろうということは琳にも理解できた。
だが、自分の魔力ではあれほどの密度の魔法を破る術など存在しない…。
諦めが頭をよぎったが、突如信条から話かけられる。
錬「真壁だっけ?お前さん火球出せる?」
琳「まあ、出せなくないが連発はできないぞ?」
信条の言う通り火球を出してみるが魔力をあまり練っていないため、良くてライターの火レベルの小ささだ。
錬「それじゃ、その火球あの氷のど真ん中に打ってくれ」
琳「あの密度の魔法にこのライターほどの火をぶつけるってのか?砕けもしないのに無駄…」
錬「まぁ、騙されたと思って打ってみな?」
「念仏は唱え終わったか?」
相手もすでに発動する準備ができていた。ダメもとで氷の塊の中心に火球を投げつける。
バキィ!
火球は氷の塊にぶつかると、消えることなく貫いていく…。
貫いて砕け散った氷の塊に先輩たちは埋もれていく。
「ぎゃあああああ!」
重さで何もできないでいる先輩たちの氷を触れる信条。
その氷はまるで、そこに何もなかったように砕けて消えていく…。
錬「よかったね~先輩たち!真壁が本気だしてたらこんなんじゃ済まなかったよ?氷を消してくれたのも彼だからお礼言ってね?」
「「「す、すみませんでしたあああ!失礼しますううううう!」」」
怖いものを見たように先輩たちは屋上から逃げていく。
琳「信条…お前、今の…」
錬「今見たこと、内緒にしててくれ?」
その時のことが俺が錬の力の一端を知る出来事であった…。
当の先輩たちは俺の力だと疑っていなかったが、それ以降はとくに因縁などかけられることなく平和に過ごしていた。
屋上の件からすぐ、俺は錬と学校で過ごす機会が多くなり錬にトレーニングを受け、予定が合えば遊んだり、渉たちと一緒に鍛錬することとなった。
そんな中で錬の秘密を知り、共有する中に発展する。今では親友といっていいほどつるむようになった。
そんな事になったからか、中学3年になった時には実技の方では学年トップの成績を誇る紗菜や渉達に並ぶほどになっていた…。
来年は高校に入学する…俺は親友の選んだ道をできるだけサポートしたい。
この世界に生まれ変わったと言っていいのかはわからないが、魔法がすべての世界で絶望の淵にいた俺を救い出してくれたコイツに報いたい…そんな気持ちがあった。
琳「で、錬…お前さんどうするんだよ?」
アナザーストーリー 真壁琳編 完
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