第3話 ありふれた日常で

ルナが家に来てから一か月。エルフ族が日本の学校に通うには特別なコネがない限りは無理なため、錬が学校に行っている間ルナは誠の家にある本で独学で魔法を学んでいた。相変わらず魔法は使えないでいる。

錬が帰って来てからは錬より過去の文献に関する色んな事を教えてもらっている。


ルナ「ねぇ、錬…どうして錬は魔法を使えないの?」


錬「ん?あぁ、そのことか…昔ちょっとね…。」


ルナ「話したくない事?」


ルナはちょっと複雑そうな表情をみせると錬はそれを悟り話し出す。


錬「まぁ、色々と絡んでくるから大っぴらには話せないんだよ。でも、今日は当事者も集まるし丁度いいかも。この事を聞いても内緒にしててくれな?」


そう言うと錬はルナを連れ出しとある場所へと向かった。


ルナ「ここって…」


錬「そう、ダンジョンって呼ばれてる所。」



ダンジョン…世界各地に点在している強い魔物が存在している場所。遺跡のような見た目のものや、洞窟のような見た目のもの等様々。時折ダンジョンより強い魔物が出てきてしまうことも過去にあり近隣の町や村等が壊滅したとの報告も存在している。そのため国単位で見守りを行っているところも多くある。

数が少ないため、各国が躍起になって自国にある場所を攻略しているが、1999年現在攻略が確認できたのはアメリカにある一つだけである。

2人の目の前にあるダンジョンは日本にも2つほど点在しているダンジョンの一つだが…



ルナ「でも、このダンジョンと錬が魔法を使えない理由は関係あるの?」


錬「まぁ、そうなるな。このダンジョンなんだけどな、とある事情から2年前に俺が攻略しちゃったんだよ。でも、完全な攻略と言ってもいいのかわからないけどな。」


いたずらに笑う錬にルナはそれは大事だし、そんな実績があるのになんで実の両親に蔑まれているのかわからないと錬に訴えた。


⁇「それは、私たちのせいよ」


突如後ろから声を掛けられ振り向くと、そこには2人の男女がいた。そのうちの1人は錬にどほとなく似ている感じがあった。


錬「おっ?2人とも来たな。紹介するよ。先月からうちの居候のエルフでルナっていうんだ。」


ルナ「よろしく…」


紗菜「そう、あなたが錬がいってたルナちゃんね。よろしく。私は錬の幼馴染で小松原紗菜こまつばら さな


渉「エルフ族か…。俺は兄さん…、信条錬の双子の弟の信条渉しんじょう わたる


錬「そう睨むなよルナ。渉は悪くないんだよ。むしろ知ってて両親から俺をかばってくれてたんだからな。」


いつの間にか弟の渉に鋭い視線を送っていたことに気が付いた錬がルナを諫める。


錬「あと、当事者が3人ほどいるんだけど、そちらは追々話すよ。とりあえず、ダンジョンに入ろう。」



4人は洞窟のようなダンジョン内に入り、すこし広い所で立ち止まった。


ルナ「ダンジョンは階層に分かれてるって話を聞いたことがあったけど…」


錬「そうなんだけどな。まぁ、ちょっと見てなって!」


錬が片膝をつき両手を地面につくと床に魔法陣が現れ眩い光に包まれる。

次に目を開けた瞬間には先ほどと違う景色があり、そこには先ほどまでとは違う広い空間が広がっていた。


錬「びっくりしたろ?俺が創った転送魔法陣。」


ルナ「転送魔法陣って、どうやって?錬は魔法が使えないんじゃ?」


紗菜「錬には魔力がない、だから魔法は使えない。だけど、あることをして魔法陣にここに存在しているマナを利用しているの。だから錬は自分の魔力を使ってないのよ。」


ルナ「マナを直接利用したの!?そんなこと、エルフ族でもしないのに?そんなことをしたら身体が…」


錬「大丈夫。最近は転送魔法陣を発動するくらいじゃ負担なくなったし。」


ルナの心配をよそにけろっとしている錬。

そんな錬を見つめる2人、2人の眼にはある覚悟が宿っているように感じ取れた。


??『心配するな。その程度じゃ死にはせんし、ぶっ倒れるほどでもなかろう。』


突如響いた声にルナは驚く。




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