第2話 出会い
都心で必要なものを買い出しし終え、地元に帰ってくると帰りの途中で通行人たちからなにやら気になる事が聞こえてきた。
¨この先の路上でエルフの奴隷が売られている¨という事だった。
帰る際に丁度通る道だった為、興味本位でその場所をのぞいてみる。
そこには確かにいた、とんがった耳エルフにみられる特徴だ。
『さ~、買った買った。珍しいエルフの子供だよ~。魔法は使えないが日常の手伝いならできるよ~。』
『なんだ、エルフなのに魔法が使えないのかよ…』
『見かけだおしなのね…』
魔法が使えないと聞いたとたん離れていく人々。
誠「今のご時世で奴隷か…。それに、珍しいものだな、魔法に長けた種族のエルフが魔法が使えないとは…」
おじさんも珍しいという理由、エルフ族は元々秘めている魔力の量が人間やドワーフの数倍といわれており、魔法にも長けている種族なため、過去の戦争などでもかなり苦戦を強いられたとの記録もあるくらいだ。
更に長寿であり1000年も生きるエルフもいると言われている。
錬「おじさん、あの娘¨ハイエルフ¨だよ。」
誠「ハイエルフ?錬が持ってきた昔の書物に書かれてるエルフを束ねる素質のあるエルフのことだよな?」
錬「うん、普通のエルフは金髪なんだけど、ハイエルフとなる素質があるエルフは銀髪に生まれるって書かれてあったはずだよ。」
誠「それなら、次期エルフ族の長になるような人物じゃないのか?なぜそんな子が…」
錬「多分、忌み子なんじゃないかな?エルフの長になりえる人物がいなくなったっていうニュースもないし…エルフ族も騒いでいないならあり得るかも。」
誠「双子の片割れ…か…魔法も使えず、忌み子であるから排除するか…」
錬「似てるね、オレと…」
ぽつりと言った錬の言葉を聞き誠は錬をみつめる。
どこか悲しそうに、そしてエルフの少女に自分を重ねるような様子をみた誠は一言発した。
誠「よし、あの子引き取るか?」
錬「おじさん…でも…」
誠「気にするな、世間の眼なんて気にしないしな。それに、食いぶちが一人増えたところで変わらんだろうさ」
錬「でも、父さん達はいい顔はしないだろうね…」
誠「だろうな。でも、俺は後悔のない生き方をしたい!お前にもそれを味わせたくないと思っている。他人がどう思おうが俺の人生は俺自身が決めたものでありたいと思う
。それが俺の信条だ!」
錬「おじさん…それギャグ?」
誠はぶははと笑うと奴隷商人に向かって歩きだしていた。
誠「そのエルフの子を私が買い取ろう!いくらだい?」
「おや?この子を買い取るのかい?それじゃあ、1千万円になるで?お客さん持ってるのかい?」
誠「1千万!?そんな大金…」
そう言いかけた時であった。不意に錬に声を遮られる誠。
錬「おっちゃん、金の延べ棒3本くらいで足りる?」
「あるんか?坊主?」
錬「うん、あそこに置いてるから確認してきてよ。おじさんも一緒に。」
人気のない建物の裏手を指さすと確かにそこには金のインゴットが3本並んでいた。
「これ、本物かいな?」
商人は怪訝そうに聞くと、誠が確認を行う。
誠「…本物だ。あんたも確かめな。」
商人は確認した後、本物だとわかると取引成立だと誠に告げ、インゴットを3本もって消えてしまった。
誠「錬…また、無理したろ?」
錬「ちょっと…ね…。」
少しふらつきながら答える。
誠「まったく…。だが助かったよ。ありがとう。」
誠はふらつく錬の前に背中を向けてかがむ。
錬「疲れたから…おじさん…あと・・よろしく。」
そう誠に伝えると錬は誠に倒れ込むように眠ってしまった。
誠は錬を背負うと、エルフの少女に向かって尋ねる。
誠「君の名前は?」
「ルナ…。その子…大丈夫?」
誠「そうか、ルナちゃんと言うのか。錬のことなら大丈夫だ。ちょっと疲れただけだと思うからな。」
ルナ「私を買ってどうするの?」
少し警戒するルナに誠は優しく答える。
誠「どうするもこうするも、君はもう私たちの家族のようなものだ。一緒に帰ろう」
錬をおんぶする誠から差し出された手をルナは恐る恐るとる。温かい感触にルナは一安心したのかこわばった表情を和らげ、手を引く誠の後をついて帰路に就くのだった。
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