第1話 転生

西暦2022年 日本 


今、オレは救急車の中で死にかけていた。




「兄さん!」




涙を流し、オレに呼びかける弟。一緒に買い物に来ていた際、通り魔事件に会ってしまい弟を守るためにかばい重傷を負ってしまった。




「よか・・・った。」




どうやら弟は何ともないらしい・・・。うすれゆく意識の中でオレは弟の無事を確認しその目を閉じた。


そして、オレの記憶はそこからなくなった。












1999年  日本皇国




「ハッ!」




オレは自室のベッドの上で目覚めた。




「また、あの時の事か…」


オレの名前は信条錬しんじょう れん

オレには前世の記憶とやらがある。前にいたところは日本という国で両親や弟と一緒に暮らしていた。弟をかばい、死んだはずと思っていたのだが…。

こちらの世界で気が付いた時には色々と驚いた事が沢山あった。

それは、転生前も転生後も同じ名前で同じ容姿をしていること。それに自分の父母も同じそれどころか双子の弟もいるというなんとも奇妙なものだ。

だが、違うのが以前の世界では死産したはずの妹が生きていたり、今いる国も日本という名前はあるものの、前にいた日本と少しかけ離れている世界のようだ。

ただ、他の国も中国やアメリカ、ヨーロッパなども見たことのある名前だけにちょっと驚いている所もある。


今いる世界のには、ゲームやおとぎ話のような魔法もあれば魔物という怪物もいる。ちなみに動物は存在せず、動物全部が魔物に置き換わっているという感じである。

種族もエルフやドワーフといった者達もいて昔から争いが絶えないらしい。もちろん人間同士の争いもある。以前いた世界でいう世界大戦なんかもこちらでは少し名前を変えて今も語り継がれている。現在は人間同士や他種族との争いは落ち着いている。

今はエルフ族とは争いはなく交流が続いているが、一部では小競り合いをしている国もあるとかないとか。


ちなみに魔族と呼ばれる種族もいたが1000年程前に起こった大戦で大敗し、いなくなったとの話があるが詳しいことはわからない。エルフ族の一部にはそのことを知っている人は今ではごくわずかしかいないらしい。人間が残した書物にもごくわずかな情報しかない為、真偽はわからない。

ざっとここまでが自分の知る現在までの出来事だ。追々、また語る機会もあると思う。


俺はベッドから起き上がると着替えをし、一階にあるリビングに向かった。

向かっている途中でいい匂いがしたため、一階で自分の養父が朝ご飯を作っているのだとわかった。



錬「おはよう。誠おじさん…」

誠「おっ、錬か今日は早いな!」

錬「う~ん、また変な夢見ちゃってさ…」


がしがしと頭をかきながら階段を下りてくる錬に少し心配そうに尋ねる。


誠「…また、前世のなんとやらのか?」

錬「まあ、そんなとこ。」




台所で朝食を作っているのはオレを育ててくれている、実の父の弟で信条誠しんじょう まこと

オレの育ての親だ。訳あって2年前に実の両親に見放されてしまいそうになったオレを引き取り今まで面倒をみてくれている。

実の父とは意見の違いから色々喧嘩が昔から絶えなかったらしいという話を聞いた。ありのままのオレを受け入れてくれて感謝しかない。





錬「今日は都内に行くんでしょ?一緒にいっていい?」

誠「まあ、いつも勉強を頑張っているからな…いいだろう!」

錬「やった!何買おうかな~」

誠「おいおい、今から何かねだるつもりか~?」



おじさんとの二人暮らしではあるが、毎日を楽しく過ごせていた。



東京都 心皇区 



錬「さすが都内…色々あるね~」


オレは辺りを見回す。魔法に関係する道具、生活用品ここだけで必要なものがそろってしまう。

自分のいる東北の土地から結構離れているここ東京。そこには田舎などにはない様々なモノがあふれかえっていた。



誠「ここがこの国の中心部と言われるからな。政府だけでなく学園の中枢部もこの区にあるからな。色々なものがそろわないとダメなんだろうさ。」

錬「なるほど…」



国会議事堂等もあり、政府の中枢も兼ねているこの地区には日本屈指の魔法学校 魔法皇聖校まほうこうせいこう 通称:『魔皇まこう』と呼ばれている学校も存在している。日本の学生たちはいずれもここを目指して各県から腕を磨いて日夜勉学に励んでいる。

ちなみに補足しておくと、この世界には高校まではあるが、大学というものは存在しておらず大学にあたるものがこの魔皇ということになる。

小学校に入学当初、自分の父親にここを目指せ等言われたこともあったことを錬は思い出していた。

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