作戦会議
「出力装置がないってどういうことよ!」
私は思わず声を荒げてしまった。
「しようがないだろ、コレはあくまでヒュードロの代用。しょせん
そんなこというまでもなくわかってたんじゃないの、というメイの白い眼……。
あかん、しょっぱなから暗礁に乗り上げた。何が「大丈夫」だ、私‼︎
敵のいなくなった結界3(三層ある結界の最奥部)内、始まりの場所でもある石段近くのガレージで私たちは作戦会議を開いていた。
……というより私的にはとっとと装備を整え
メイの持つ
「なんだよ、姐さん。自身満々で戦略的撤退とかいってたくせに」
アキラがからかってるのか落胆してるのかよくわからない声音で云った。
「姐さんはあの
こちらは明らかに弾んだ声でモヒカンくん。わかるわかる、マニヤってそうだよねえ。
「多少は、ね。
だからこそのヒュードロの装備だったな、と今更思い出す。
「訊いていいっスか?」
「どうぞ」
「そのシールドとかいうやつ、有効範囲はどんなもんなんでスかね?」
なるほど。確かにそうだ。目の付け所がなかなかシャープだな、君!
「通常のシールド持ちが展開するのは、地面から上、半球状にほぼそいつの長さを直径として展開される。けれど——」
「どう考えてもそういうふうには展開してないですよね? よほど大出力のシールド持ちとやらがいたとしても、いくらなんでも三〇米はでかすぎだし、球の形に展開してるとも思えない」
「そうね、あんなデカい構造物に無人兵器が取り憑いてってケースも初めてだから絶対とはいわないけれど、精々一〇米がいいとこじゃないかしら?」
大型のシールド持ち、というのには出遭ったことがない。
「としたら、あのシールドには穴がある」
お利口さんね、とモヒカンくんのモヒカンを撫でる。おおっ。ちょっとコレ、
「ユイ、よだれ拭け。……てことは、つまりどういうことだよ? あたしでもわかるように説明してくれ」
「つまり、シールドは筒状に展開されているし、守られているのは足裏から精々一〇米程度じゃないかってこと」
「つけくわえるなら」とモヒカンくん。「足の裏も攻撃効くんじゃないかってことですね!」
「いやあ、それはどうかな?」
「え、ダメっスか?」
しゅん、とするモヒカンくんにいい子いい子してあげながら、
「着眼点はいいんだけど、現実がね……」
私はタブレットをモヒカンくんに渡した。マーカーがついているのが例のカンノンで、他にはいくつか明滅する点があるだけだった。ほぼ殲滅できた、ということだ。結界外はともかく内部は、ほぼ。
「……動いてませんね」
「撤退する前に
「無人兵器を煽る人とか初めて見たんで忘れません」
「……あれは煽ってたんじゃなくて
「そんなものまで」
「そいつは兵器オタクだから。そのせいでいつも
「私のせいばかりじゃないでしょ!」
「スカンピン……?」とアキラ。
「えーと、スカンピンというのは」とモヒカンくん。
「コラコラ、そんなもん検索しなくていいからっ!」
ちなみに地潜というのは地雷の一種で、接地すると自ら土の中に潜る機構を備えている。通常の地雷だとシールドに破壊されて終わり。尤も、それでも時間稼ぎにはなったろうが……。
「あわよくば基底部を、なんなら駆動機関まで壊れてくんないかなーと思ったけど、
「思った以上にヤバい代物っスね、あれ」
「見るからにヤバいじゃない、なんなのよ、アレ! しかも実際はさらにヤバい! タブレットに一個の輝点で表示されてるの、重なってるからかと思ったら完璧に一個じゃないのさ!」
「それって?」とメイ。
「何体の無人兵器かは知らないけど、連携じゃなくて並行起動してるってことよ。つまり、一個体として動作してる」
皆がぽかんとした顔で私を見てる。
「ああっ、もう! モヒカンくんもわかんないかっ! いい? もっとわかりやすい例を挙げる。わざわざハリボテの像まで使って巨大な自分を作り上げたってことは、あいつらが『畏れ』を理解してるってことよ? あいつらは並行起動することで、人の感情を計算するまで成長を遂げたかもってこと!」
一瞬の間があってからアキラがぼそっと云った。
「ヤベえじゃねえか、それ……」
「アレが
「そうだ、ワンコ! おまえはアレと最初から対峙してんだろ? どこから来たんだよ、アレは」
メイの言葉に、アキラが頭を振る。
「わからないんだよ、姐さん。突然現れたんだ、アレは……。大体、高崎なんてもうないじゃないか! なんだよ、タカサキカンノンってさ!」
「海の底……」
モヒカンくんが云った。
「海の底に沈んでたんだ、あれは。おそらく海伝いに
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