第30話 アルコール



 せっかくだからと一緒にご飯を食べる事になったのだが。


 おかしい。


「お酒は、つかっていないはず」


 なのになぜか、酔っ払いの症状が出てきてしまった。


 頭をゆらゆらしていると、保険医が「おや」という顔でこちらを観察してくる。


 観察動物を見るような視線で、ひやひやしてしまうが、体が思ったようにうごかない。


 逃げるどころか、突然やってきた睡魔にまけそうになる。


「もしかして、綿の実が発酵してたのかな? たまにあるみたいだよ。アルコールができてしまうものが」


 聞いてない。


 そんな話、ゲームにはなかった。


 あれだろうか。


 全年齢向けのゲームだったから?


 いや、ただ必要ない情報だからはぶかれたとかそういう事だろう。


 そんな事はともかく。


 どうしようこれでは、帰れない。


「このままうちに泊まっていきなよ。歓迎するよ」


 歓迎されたくない。


 激しく否定の意を表明したかったのだが、気持ちに反比例して睡魔が強くなってきた。


「わたしの、ていそうは、のわー……。すぴー」


 それで、結果がこれだ。


 最後に何を言おうとしたのか覚えていない。恥ずかしいセリフでなかったらいいのだが。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る