第29話 クッキング



 お店で必要な材料を買って、よりみちした後。


 保険医の家に戻って来た。


 その後は、さっそく料理開始。


 お嬢様だから基本的に自炊する必要のない生活を送っていたけれど、頑張って勉強していてよかった。


 材料の切り方で手間取る事はないし、調理器具の使い方も分かっている。


 最初の手料理だったら、ノワール様にふるまいたくてしょうがなかったのに。


 けれど、保険医の健康の為だ。


 あと、自力で生活するのが苦手そうな保険医の日常のためだ。


 性格はあれだけど、泊まるところを一応気にかけてもらったのは事実だし。


 仕方ないと我慢してクッキングタイム続行。


 そして一時間後。


「はい、できました。何の変哲もない野菜炒めです。あとカレーも」


 あとは、別で買ってきたパンもある。


 バターをぬって、食卓に出した。


 ちょっと質素かもしれないだけど、これが限界。


「日持ちするものは、刻んで冷蔵庫に入れておいたので、二、三日はいけますよ」

「お嬢様なのに、けっこう料理できるんだ」


 保険医は素直に感心した様子でテーブルについた。


「何事も勉強ですから」

「一体誰のために学んだのかな。ひょっとして僕の為とか」


 え? 何言ってるのこの人。


 ドン引きしてたら、「そんなに引かなくても」と苦笑されてしまった。

 

 いいえ、普通の反応だと思いますよこれは。


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