第27話 食べたいの?



 保険医が、楽しそうな表情を向けてくる。


「面白そうだね。一度食べてみたかったんだ、こういうのって一人じゃ頼みづらいし。良いよね?」

「決めるのは財布の主である先生だと思いますけど」


 どうやら彼は、わたスイーツに興味津々の様だ。


 こんな性格でも一応人目は気になるらしい。


 男性だから、我慢していたのだろう。


 元の世界では男性でもスイーツを嗜んでる人がいたけど、こちらの世界だと軟弱だと思われる事がある。


 だから保険医は、この買い物がいい機会だと思ったのだろう。


 なんだか子供にねだられている母親のような気分になった。


 微妙な気分になりつつも、その甘未を頼んだ。


 ヒロインだったら、「お菓子がほっぺにくっついてるよ」とかいって攻略対象との恋イベントが始まるけれど、私は悪役令嬢なのでそんな事はまったくない。


 そう思って、一つぶんのそれをうけとる。


 買い物の荷物は保険医が持っているので、それと交換になった。


 綿菓子スイーツのささった棒切れを渡すと、珍しい事に保険医が少し照れた顔をみせる。


「思ったよりはずかしいね」


 大の大人ですしね。と思ったが言わないでおいた。


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