第13話 仮にも保険医でしょうに



「やあ、よくきてくれたね」


 にっこり顔の保険医が顔をだした。


 なぜか額から血が流れているのだが。


 文句を言うのもわすれて、思わず心配してしまった。


「あの、大丈夫なんですか。それ」

「ん? ああ、さっきそこで転んでね。急いでいる時は、たまに怪我しちゃうんだよ」


 額からながれる血を無造作にぬぐう保険医。


 仮にも保険の先生なのだから、そんなぞんざいな手当てをしないでほしい。


 というか手当すらしていない。


「自分の事は、適当なんですね」

「まあ、お金にならないし、評価にもつながらないしね」


 それでいいのだろうか。


 私は、保険医の方をおして家の中に押し込む。


「とりあえず、何かふくものは? 消毒液とガーゼの場所もおしえてください」


 荷物をひきとってさっさと帰ろうと思ったのに。


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