第12話 保険医シーク・グランデの家
生活用品を人質にとられてしまったなら、いかないわけにもいかない。
寝巻とか、勉強道具とかも、すべてあっちにいってしまったのだから。
使用人が預かっていた住所のメモを見ながら、保険医の家へ向かう。
その気分は地獄の底で、処刑待ちしてる人間のようだ。
身一つで追放された人間が、枯れ野の荒野を歩くような気持ちで自動的に歩行していっていると、いつのまにかその場所にたどりついていた。
静かな住宅街の一画。
一般庶民とお金持ちの区画のちょうど中間くらいの場所に、その家は建っていた。
大きすぎずかといって小さすぎる事のない。
特徴のない、家。
とりあえずノック。
「……」
しかし返事がない。
「あの、シーク・グランデシさんのお宅でしょうか」
留守か、それとも間違えたのだろうか。
住所のメモと見つめあっていると、不意に家のドアが開いた。
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