334話 記憶の仕方
第336章
「航空知識試験の第3問は、ラファール戦闘機の射出座席を製造した会社はどこかという問題だったな」
「そう、そうだったね、それにしてもよく覚えているね、アラン」
「言われればそうだったと思い出せますが、ほとんど忘れてました、ドロンさん」
「コックピットから、座ったまま座席ごとパイロットが飛び出してくるんではないか、忘れようにも忘れられるものではないよ。射出座席というものはね。まるで映画のシーンみたいではないか」
「なるほどね、映画のシーンのようにして読んでいけばいいわけね。そうすれば印象が強くて忘れたくても忘れられないね、アラン」
「文字を読むときただ文字として読むだけではなく、その文字が持つイメージを視覚的にして読めば記憶に残りやすいわけですね、ドロンさん」
「僕が文字を読むときはね、いつも映画を見ているときなのだ」
「要するにアランにとっては、文字を読んでいるとその文字が書かれている用紙がまるで映画のスクリーンのように見えてしまうということなんだね。そしてそのスクリーンのような用紙に文字を読むごとにシーンが現れてくるというわけなんだね、アラン」
「文字を読むだけで映画を見ているような気分になれるわけですね。ドロンさん」
「そうだよ、だから僕にとっては文章を読むということは映画を見るのとまったく同じことなのだ。ちょうど映画のシーンの字幕を読んでいるみたいな感覚だね。僕にとって文章を読むということはね」
「そういうのって、ある意味で記憶の仕方のテクニックでもあるね、アラン」
「棒暗記ではなくて視覚化して覚えていくという技術ですね、ドロンさん」
「棒暗記ではそう簡単には覚えられるものではない。意味がないからな。視覚化して意味づければ覚えやすくなるからな」
「ところでこの射出座席を製造した会社ってマーティンベイカー社だったね、アラン」
「あたしもその会社の名前を書きました、ドロンさん」
「そうだよ、僕もだ」
「アランがそう書いたのであれば正解だね、アラン」
「よかったです、ドロンさん」 つづく
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