314話 よくある偶然

316章

「ここに試験を受けるために乗ったTGVの新幹線でユキコとまた出会った時だよ、意外でなくなったのは」

「ここに来るときも二人は一緒だったわけか、アラン」

「偶然でしたね。試験日の前の日の夕方5時にブレスト駅集合でしたから。だからたまたまでしたね、ドロンさん」

「早くブレスト駅に着き過ぎても仕方ないからな。あの時間のTGVがちょうどいい時間の列車だったからだ」

「そう、では列車をこのブレストの駅で降りた時さぞ驚いたでしょうね。パリの軍情報採用センターにあなたと一緒にいた日本の女子にまたこの駅で出会った時は、アラン」

「いいえもっと前からでした、ジャンヌ。パリの駅でTGVの新幹線に乗った時からでした、そうでしたねドロンさん」

「そうだよ、ユキコを車内で見かけた時は驚いたね。あの面接の時にいた娘が僕と同じ列車に乗っていたからな。あの娘も僕と同じ試験を受けに行くのかとね」

「しかし列車は長いでしょ。車両もたくさん連結しているし、席も指定席だし。どうして車内で出会ったの? アラン」

「通勤電車のように車内が満員というわけではないからかもしれません、そうですね、ドロンさん」

「そうだね、車内の通路を歩けばどういう乗客がいるのかわかるよ」

「では、ユキコを探して車内を歩き回ったんだ、アラン」

「偶然ですよ、偶然。こういうことってよくあることですよね、ドロンさん」

「そうだよ、よくあることだよ」

「それで車内で二人が出会ってそれからどうしたの、アラン」

「ブレストの駅まで一緒に来ましたよ、ジャンヌ。そうでしたねドロンさん」

「そうだよ」

「二人の席はそれぞれどのへんだったの、アラン」

「あたしの隣でしたね、ドロンさん」

「うん」

「席まで隣どうしか、指定席がね。これもよくある偶然だったんだね、アラン」

「いえそうではありませんよ、ジャンヌ。あたしの隣の席が空いていたからでした。そうでしたね、ドロンさん」

「そうだよ」

「はいはいわかったよ、アラン」

「そうそうそうでしたね、ドロンさん」   つづく

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