313話 意外

第315章

「話がだいぶそれてしまったけれど、僕たち、ユキコと僕だけど、僕たちはパリの軍情報採用センターで申し込んだんだよ」

「パリかいいね、あたしも一度行ってみたいねパリというところにね、アラン」

「ジャンヌはシェルブール生まれでシェルブール育ちなため、パリに行ったことが今まで一度もないのだそうです、ドロンさん」

「そういう話を聞くと意外に感じるね、フランス人はみんなパリに行ったことがあるのだとばかり思っていたよ」

「これでわかったでしょ、世の中にはいろいろな人がいるのだということが、アラン」

「そうですね、自分一人だけの考えが絶対ではありませんね。自分一人だけが見ているこの世界、これは本当の世界のごく一部だけですね、ドロンさん」

「確かにそうだな。今まで見てきた世界がまったく違う赤の他人同士が偶然に一緒になることによって共通の世界が生まれるわけだな」

「もうそんなわけのわからない話はいいよ、アラン」

「そうですよ、もう試験は終わったんですから、ドロンさん」

「そうだな、ではパリの軍情報採用センターでの出来事。ここで海軍担当者との一番最初の面接があったんだけれど、僕が順番を待っていた時だった。僕の前に面接を受けていたのがユキコだったな」

「その時からお二人は知り合いだったわけか、アラン」

「あたしの面接が終わって部屋から出た時、次の面接の順番待ちをしていた金髪の受験生がドロンさんだったみたいです。そうでしたね、ドロンさん」

「そうだよ。ユキコが面接室から出てきて僕の前を歩いて行った時思ったね、あの娘ななんの試験を受けるのだろうかとね。まさか僕と同じ試験を受けるとはね」

「これも意外だったわけ? あたしがパリに行ったことが一度もないというのと同じように、アラン」

「女子がEOPAN・FRの試験を受けるのはやはり意外かもしれませんね、ドロンさん」

「今はもう意外ではなくなったけれどな」

「あたしがパリに行ったことが一度もないこともね、アラン」

「あたしがEOPAN・FRの試験を受けることもですね、ドロンさん」   つづく

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