307話 ブレストから見る海の中

309章

「ほら海の中のあそこに見える半島の先端」

「プワントデエスパニョールというところだったね、アラン」

「スペイン人の先端という名前でしたね、ドロンさん」

「さっきまで僕たちはあの半島のそばを船で通ってきたんだな」

「ロスカンヴェルという名前の半島だったね、アラン」

「たしか、カヤックという小さい舟を借りてセーリングを楽しめるところでしたね、ドロンさん」

「ロスカンヴェル半島の前はロング島だったな」

「原子力潜水艦の基地があるところだったね、アラン」

「第一次世界大戦の時は、ドイツ軍の捕虜収容所があったそうですね、ドロンさん」

「ロング島の前はロンド島だったな」

「小さい無人島だったね、アラン」

「近くにアルバ公爵という船の係留施設があったとか、ドロンさん」

「今僕たちの前にあるこの海、この海をどんどん南の方向に向かていくと今まで僕たちがいたところ、ランベオックの海軍基地がある」

「今となってはもうなつかしいところになってしまったね、アラン」

「そうですね、なんだか過去の世界になってしまいましたね、ドロンさん」

「いや未来の世界になるかもしれないよ」

「それはこの試験に合格出来たらの話だけれどね、アラン」

「合格てきたらあそこで今度は訓練を受けなくてはいけないからですね。ドロンさん」

「そうだよ。だから何としてでもあそこを未来の世界にしたいものだ」

「あなたならできるでしょうよ、アラン」

「そうですね、あそこは未来の世界です、ドロンさんの」

「いや僕たちの未来の世界だ」

「あそこがわたしたちの未来の世界と思うとまた光輝いて見えてきたね、アラン」

「過去の世界というとなんだか色あせた薄暗いイメージがありますけれど、未来の世界というと希望が持てる明るい世界のイメージですね、ドロンさん」

「そうだな、これから僕たちが行く世界はすべて未来の世界だ。だから希望に満ちあふれた明るい世界なのだ」

「ではこれからTGV新幹線に乗るために行く予定のブレスト駅も明るい世界だね、アラン」

「列車のTGVは13時31分発ですから一番明るいころですね、ドロンさん」   つづく


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