308話 日常非日常の色
310章
「お待たせしましたカフェノワール二つにカフェ・ノワゼット一つでございます。カフェ・ノワゼットはどちら様ですか」
「あ、それは僕です」
「ではどうぞ」
店員はカップをアランドロンの前に置いた。そして次にカフェノワールをジャンヌと藤枝の前にそれぞれ置いた。
「ではごゆっくりお楽しみください」
こう言うと店員は店の中に戻っていった。アランドロンは自分の前に置かれたカップの中を見ながら言った。
「これが僕にとっての非日常の色なんだな。真っ黒なコーヒーの中に白いミルクの色が混ざった色がね」
「あなたにとっての日常の色は白いミルクを入れないコーヒー本来の色、真っ黒だね、アラン」
「真っ黒なコーヒー、これが日常の色ですか、ドロンさん」
「君たちの前にあるコーヒーだよ、君たちの前にある真っ黒なコーヒー、それが僕の日常だ」
「しかしあたしの前にあるこのコーヒー、これはあたしの日常ではないね、アラン」
「そうですそうですあたしもです、あたしの前にあるこのコーヒーもあたしの日常ではありません、ドロンさん」
「君たちの日常は、今僕の前にあるこのコーヒーだ」
「そうそう、そのミルク色に染まったコーヒーだよ、あたしの日常は、アラン」
「そうですそうですあたしもです。あたしの日常もそのコーヒーです、ドロンさん」
「しかし今このブレストという街の中にいる僕たちにとっては、このような組み合わせが実に最適だと思うね」
「確かにね、ここのブレストという街はあたしたちにとって日常の街ではないからね、アラン」
「そうですね非日常の街の中では、やはり非日常のもののほうがよく似合うと思います、ドロンさん」
「非日常の世界に、日常を持ち込んでしまったら興ざめだ」
「そうそう非日常には非日常だね、アラン」
「日常には日常ですね、ドロンさん」
「ではさっそくこの非日常の飲み物を楽しむとしようかね、このミルクが入った白いコーヒーを」
「ではあたしも、このミルクが入っていない真っ黒な飲み物を、アラン」
「はい、ではあたしもです、この真っ黒でにがそうな飲み物を、ドロンさん」 つづく
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