303話 海の見えるテラス席

第305章

「こちらでございます」

 店員は藤枝たち三人を案内した。うす暗い室内の一番奥にあるドアを店員が開けた。すると突然室内が明るくなった。太陽の光が室内に差し込んだ。この時一瞬まぶしくて何も見えなかった。しかし次第に目が慣れていくと、そこには大きな真っ青な海があった。そしてその海を前にしてテラス席が置かれていた。

「この席でございます」

「いいなあ、イメージにぴったりの席です」

「これこれ、こう来なくっちゃ、ね。アラン」

「そうですそうですこれですこれです、ドロンさん」

「ではどうぞ」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます。ではアラン」

「ありがとうございます。ではドロンさん」

「ご注文の方はごゆっくりとどうぞ。決まりましたらここにある鈴を鳴らしてください」

 こう言うと店員は部屋の中に入っていった。

「まさに海が目の前だ」

「そうだね、ここで海を見ながらコーヒーでも飲んだら最高だね、アラン」

「そうですね、さすがブレストは海の街ですね、こういうすてきなテラス席があるなんてですね、ドロンさん」

「普通のテラス席は歩道にあるけれどね、ここは海の前だ。このテラス席というもの、これはその店がある地域独特の性格を表しているね」

「そうだね、この町は海の街だから海だけれど、もし湖の街だったらおそらく湖がよくみえるところにテラス席だね、アラン」

「そうですね、もし山の街だったらやはり山の前というか、山の姿がきれいに見えるところですね、ドロンさん」

「カフェには普通はカウンター席、店内席、テラス席というように三種類の席があるな。カウンター席と店内席はその店の個性で決まる。しかしテラス席は、その店の個性よりもその店のある地域の個性で決まるように思うね」

「カウンター席と店内席は、お店の中にある席だからね、そのお店の個性そのものだよ、アラン」

「テラス席はお店の外にある席ですからね、だからそのお店のある周りの環境そういうもので決まりますね、ドロンさん」   つづく


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