300話 海岸のカフェ
第302章
「あそこにあったじゃないか」
「なにが、アラン」
「なにがですか、ドロンさん」
「カフェだよ。船から降りてブレストの駅まで歩いていく途中にあったじゃないか」
「ああ、あそこねそうそうあったあったね、アラン」
「ああ、ありましたありましたね、ドロンさん」
「ではあそこに行こう」
「そうだね、アラン」
「そうですね、ドロンさん」
「しかもあのカフェ、海が見えるとこにあったじゃないか」
「そうだったね、条件を満たしているね、アラン」
「では早く行きましょう、ドロンさん」
藤枝たち三人はさっそくそのカフェに向かった。
「最初そのカフェの前を通った時は、ただいいカフェがあるなという気持ちだけだったけれど、これからそこに実際に行くことになるとは、こういうのってなんだかおもしろい運命だね」
「運命というのは大げさだけど、確かにおもしろいめぐりあわせだね、アラン」
「今までまったく自分とは関係のなかったものが、自分と関わりあいになるとは、こういうことですね、ドロンさん」
「人間の人生というものは、このような運命というか、ジャンヌが言ったようにこれは大げさな言葉であれば、めぐりあわせというもの、これらの連続で成り立っているようだね」
「あたしたちの生活は毎日毎日の様々なめぐりあわせの連続だね、アラン」
「これから先、どういうめぐりあわせが待っているのでしょうかね、ドロンさん」
「それはもちろんこれから行くカフェで何を注文するかということだよ」
「そうだね、では何を注文するか今のうちに考えておかないとね、アラン」
「これから行くカフェにはいったいなにがあるのでしょうかね、ドロンさん」
「もちろんカフェにあるものはどこも同じだけれど、ただそれぞれの店ごとに微妙な違いが必ずある。それが実にいいものだ」
「この世に全く同じカフェはないからね、アラン」
「そうですね、だからどこのカフェに行っても行ったかいが必ずあるというものです、ドロンさん」 つづく
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