296話 ブレスト上陸

 298章

 船の前面に街並みが大きく見えてきた。

「ブレストの街がどんどん大きくなってきたぞ」

「もうすぐ着くね、アラン」

「着きましたね、ドロンさん」

「船のスピードが遅くなってきたな」

「桟橋が見えてきたよ、アラン」

「あの桟橋に止まるんですね、ドロンさん」

「ではもうそろそろ降りる準備をするか」

「そうだね、準備をしないと、アラン」

「そうですね、準備をします、ドロンさん」

 藤枝たちは自分のカバンの整理をし始めた。しばらくして船が止まった。船の右側に桟橋があった。船内の乗客たちは一斉に立ち上がり、一列に並び出口に向かった。一人一人船を降りていった。藤枝たち3人も船から降りた。藤枝たちが降りたその桟橋は横幅が船の横幅と同じくらいで、細長いライン状の桟橋であった。その桟橋の向こう側にも船がひとつやっと通過できるくらいの幅の海面が縦長のライン状にあった。そしてその海面の向こう側が陸になっていた。そのため彼らが船から降りた桟橋から向こう側の陸地まで橋がかけられていた。藤枝たちはそこにかけられている橋を渡り陸の岸壁についた。

「足が地面についた。実に安定した感じだ。このように船から降りた時に感じるこの安定感、この感覚が実にいい」

「そうだね、足元がしっかりした感じだね、アラン」

「体がふわふわしなくなりました、ドロンさん」

「しかしこのような安定感が感じられるのも船に乗ったからだ。船に乗らなければこのような大地の安定感など感じることはできないからね」

「対比効果とでもいうものだね、アラン」

「まったく反対のものどうしを比べることによってわかる違いですね、ドロンさん」

「この大地の安定感はもちろんありがたい」

「安心した気持ちになれるからね、アラン」

「ホッとした気持ちになれます、ドロンさん」

「しかしなぜだか少し経つとまた船のふわふわした揺らぎがまたなつかしくなるから不思議だ」

「そうそう、また恋しくなるね、アラン」

「明日になったらまた船に乗りたくなると思います、ドロンさん」   つづく


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