294話 海はふるさと

第296章

「僕たち、というより我々人間といったほうがいいかもしれない「

「どうしたの急にえらそうに、アラン」

「何か演説でもするつもりですか、ドロンさん」

「我々人間が海という場所に魅惑されるのはどうしてなのだろうか」

「演説が始まりそうだね、アラン」

「やはり演説ですか、ドロンさん」

「それはおそらくは生命というもは海で生まれたからなのかもしれない」

「海の演説か、アラン」

「拝聴させていただきます、ドロンさん」

「この地球という星が宇宙空間に誕生したときはもちろんまだ生命などいなかった」

「そんなこと知っているよ、アラン」

「学校の理科の授業で習いました、ドロンさん」

「この地球にはね。しかしこの地球に海ができるとすごいことが起きたわけだ」

「何すごいことって、アラン」

「何でしょうかね、ドロンさん」

「つまり生命が生まれたわけだ」

「ああそういうこと、アラン」

「そういうことでしたか、ドロンさん」

「その一番最初に生命が生まれた場所、それが海だったわけだ」

「そうだったね、アラン」

「はいこれも学校の授業で習いました、ドロンさん」

「だから我々人間の一番最初のご先祖様は海の中で生活をしていたわけだ」

「ご先祖様か、アラン」

「ご先祖様様ですね。ドロンさん」

「こういうことが原因なのかもしれない」

「何が、アラン」

「何の原因ですか、ドロンさん」

「我々人間が海という場所に魅惑されることがである」

「ああ、そういうことか、アラン」

「そういうことでしたね、ドロンさん」

「海を我々人間が見るとまるで自分の生まれ故郷を見ているような気持ちになれるからなのかもしれない」

「あたしの生まれ故郷はシェルブールだから海はあるよ、アラン」

「山国で生まれ育った人はどうなのでしょうかね、ドロンさん」

「その証拠に海を見るとなんだかホットしたように気分になれるだろう」

「確かにそうだね、アラン」

「本当にホットしますね、ドロンさん」

「気持ちが落ち着くはずである。やすらぐはずだ。海こそ自分のふるさとだからだよ」

「そうそう、アラン」

「賛成です、ドロンさん」   つづく

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