279話 夢の世界から
第281章
三人は船から遠ざかっていく陸地にある海軍基地についてこのように話していた。時間がたつにつれてますます船から見える基地が小さくなっていった。そしてついに見えなくなってしまった。
「これで完全に基地とはお別れだな」
「これで完全に今までの世界とはお別れだね、アラン」
「これで完全に夢の世界とはお別れですね、ドロンさん」
「これからまた現実の世界が始まるよ」
「これからまた平凡な世界が始まるね、アラン」
「これからまた日常な世界が始まりますね、ドロンさん」
「今の気持ちは観光旅行に行った後の気持ちと全く同じだ。観光旅行に行く所は自分の普段住んでいない所で、全く知らないところだ。だから行くときはとてもわくわくした気持ちになれる。どういう景色が見れるのだろうか、どういう人がいるのだろうか、どういうものがあるのだろうか、全く知らないことばかりだからだ。未知との遭遇、これほど気持ちをわくわくさせてくれるものはないからな。だから旅行先の世界はなんだか夢の世界のように思えてくるね。夢の世界というものは要するに自分の知らない世界のことだね。だから観光旅行から帰るときは、また自分のよく知っている世界に行くことだ。つまりまた現実の平凡な日常の世界に戻ることだ。わくわくした気持ちがなくなりどちらかというと無感動な気持ちになってしまうね。今まさにこういう気持ちだよ。しかしこのような無感動の気持ちに色彩を放ってくれるものがある。思い出だ。旅行先での思い出が心の中を明るくしてくれる」
「じゃあ今あなたは心の中は明るいわけね、アラン」
「旅行というものはその後も心の中を明るくしてくれるということですね、ドロンさん」
「そうだよ。旅行に行くためのお金と時間はだから決して無駄にはならないわけだ。思い出として一生の宝物になるからね」
「今回の私たちの場合は交通費はタダ、宿泊費もタダ、食事もタダ、いいことばかりだね、アラン」
「観光旅行に行ったわけではありませんけれど、同じなような気持ちになれましたね、ドロンさん」 つづく
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