275話 船が出航
第277章
「船が動き出したみたいだ」
「本当だ、窓の景色がどんどん動いていくね、アラン」
「これでここともいよいよお別れですね、ドロンさん」
「試験に合格したらまたこれるよ」
「それはあなたの場合ね、アラン」
「そうですね、それはドロンさんの場合です」
「君たちそんなに謙遜しなくてもいいよ」
「謙遜なんかしてないよ、本当に自信ないから、アラン」
「本当です。自信など全くありません、ドロンさん」
「確かに結果はどちらかというと消極的に予想しておいたほうがいいからね。そうすれば不合格の時でもあまり落ちこまなくても済むからね。合格できると自信を持ちすぎるともし不合格だった時の落ち込みがひどくなるからね」
「そういう心理作戦で言っているのではないけれどね、アラン」
「そうですよ、そんな小細工で言っているのではありません、ドロンさん」
「わかったよ、だったらもう二度と見れないかもしれないこの窓からの景色、よく見ておくんだね」
「そうするよ、アラン」
「そうします。ドロンさん」
三人は急に静かになり、窓からの景色を懸命に見ていた。
「ほら、見えてきたぞ、海軍士官学校の校舎が真正面に」
「やはりここから見るとまるで映画やドラマのシーンみたいだね、アラン」
「本当ですね、まるで映画館にでもいるみたいです。ドロンさん」
「なんだかここから見ると、今まで僕たちがあそこで試験を受けてきたことが夢だったのではないかと思うようになってきたよ」
「ここから見ると向こうの世界は確かに夢のような世界に見えるね、アラン」
「私たちは今まで夢の世界にいたのでしょうかね、ドロンさん」
「僕はよく思うよ。現実の世界というのは今この瞬間、自分がいるこの世界ではないかとね。だから過去のなってしまった世界はもう存在はしない世界。記憶の中だけでしか存在しない世界。記憶の中だけでしか存在しない世界ということは、現実の世界ではない。だから夢の世界ではないだろうかとね」
「過去になってしまった世界はもはや夢の世界ということだね、アラン」
「夢の世界ではいくことができませんね、ドロンさん」 つづく
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