269話 港までのひと時

 第271章

 藤枝たち受験生は先輩上級生について港まで歩いて行った。アランドロンが二人に話しかけた。

「船で送ってくれるのもいいけれど、ヘリコプターで送ってくれたらもっといいのだけれどね」

「ヘリコプターはそういうことをするためにあるんじゃないよ、アラン」

「そうですね、ヘリコプターという乗り物、もっと大切なことのための乗り物ですからね、ドロンさん」

「演習目的でだよ。ヘリコプターは人員を目的地に送るという任務も重要な任務だからだよ」

「私たちをブレストの駅に送ることが重要な任務であるわけないでしょう、アラン」

「私たちを送るだけではヘリコプターを使うのはもったいないですね、ドロンさん」

「だから演習目的でだよ。演習目的でならいいじゃないか。僕たちだって十分役に立つよ」

「私たちより役に立つものならたくさんあるよ、アラン」

「そうですよね、いくらでもあります、ドロンさん」

「船でブレストまでのこの海の景色を見るのもいいけれど、やはりヘリコプターでこの海を見たかったね。空の高いところからこの青々とした海を見たらさぞかし感激ものだね」

「あなたはこの試験に合格できるでしょうから、そうすれば毎日毎日飽きるほど見られるよ、アラン」

「そうですね、毎日毎日ですからね。毎日毎日ヘリコプターに乗って空を飛ぶ訓練をしなくてはならなくなりますからね、ドロンさん」

「まだ合格できるとはわからないよ。だから不合格のためにだよ。不合格だったらもう二度とヘリコプターで空の上からこの海を見ることなどできないじゃないか」

「もし今回の試験に不合格だったときは、また受けるんでしょ。だったらまだチャンスはあるじゃないの、アラン」

「そうですよ、まだまだチャンスはあります。ドロンさんなら大丈夫です。絶対にヘリコプターに乗って空の高いところからこの青々とした広い海を見ることができますよ」

「そう願いたいね」

「せいぜい頑張りなさい、アラン」

「そうです。がんばってください。ドロンさん」

 この時、次第に港らしき景色が見えてきた。   つづく

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