240話 面接36
第242章
「ではこれで最後の質問です」
「はい」
「少し怖くありませんか(Ca ne vous fait pas un peu peur ?) 」
「こわくはありません。マカロンを作ったり、食べたりしていればこわくはありません。マカロンを作るときはその複雑な制作手順をまず考えなくてはいけません。そして次にマカロンを作るための原材料を集めなくてはいけません。このようしなくてはいけない段取りがたくさんあります。ですからこわいなどといちいち感じている暇などありません。もし仮にこわいという気持ちがあったとしても、こからさらにこれらの原材料を使用して複雑な製作手順に従って製作していかなくてはならないのです。ですから、こわいという感情など入りこむ余地などありません。また百歩譲ってまだこわいという気持ちがあったとしても、完成したマカロンを食べればここで完全にこわさがなくなってしまいます。考えてみてください。あのマカロンを食べるときのことをです。一番表の皮、あのパリっとした皮、水面上に張った薄い板ガラスのような氷みたいな皮です。これをかむときの心地よさ。この皮の下にはやわらかい皮が続き、そしてついにジャムにたどり着くのです。あの一口サイズの小さなお菓子の中にこれほどたくさんの構造があるのです。素晴らしい芸術作品だといえます。このようなマカロンを食べれば、こわいことなどありえません。フランス海軍はマカロンのためにあるのです。そしてマカロンはフランス海軍のためにあるのです。物事はすべてマカロン中心で考えて、実行していく。こうすればこわいことなどありえません」
「わかりました。これで面接試験を終了します。そしてここランベオック海軍基地での試験は一部の例外を除きすべて終了します」
面接官がこう宣言すると、面接官に四十五度の角度で座っていた試験担当官が言った。
「ではそこのドアから外に出てください。そしてすぐに自分の宿舎に戻って下さい」
「はい」
藤枝は椅子から立ちあがり頭を下げて、ドアから外に出ていった。 つづく
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