199話 和菓子とマカロン

第201章

「今日は本当にありがとうございました」

「いや、これは私が好きで話していたことだから。私の話をこんなに熱心に聞いてくれて私のほうがありがたいよ。それにしてもここの和菓子おいしかったね。私はまたパリに戻らなくてはならないから、お土産に買っていこうと思う」

「和菓子もいいですが、私はやはりマカロンですね」

「ハハハ、お互いない物ねだりということみたいだね」

「そうかもしれません。和菓子は日本ではあまりにも当たり前すぎるお菓子ですから。その気になればいつでも食べられますからね。しかしマカロンというお菓子は、日本のお菓子ではありません。それだからやたらほしくなるのかもしれません」

「そうだね。パリでももちろん日本の和菓子は売ってはいるけれど、やはりその国で作られた本物がいいに決まっている。だからここ日本で和菓子を買っていくことにとても重要な意味があるよ」

「お菓子を作っている材料などにはそれほど違いはないのに、どうしてなのでありましょうかね。日本で作られた和菓子であろうと、パリで作られた和菓子であろうとほとんどおなじであるのに」

「雰囲気的なものが影響しているのかもしれないね。食べ物をおいしくさせるのは、ただ材料だけで決まるわけではないからね」

「そうですね。食べ物の形、色合い、食器、テーブル、部屋、照明、室内温度、などなど、このようなものがすべて合わさっておいしさが決まるのだと思います」

「そうそう。それと作られた場所もね。作られた場所も今、君が述べた食べ物をおいしくする要素に付け加えられるからね」

「だからやはりマカロンはパリで作られたものが最高です」

「では、君もいつかパリに来なさい。マカロンを食べに。その時は、私の操縦する飛行機に乗りなさい」

「では今から予約しておきます」

「ハハハ。ご搭乗ありがとうございます。では私はこれで帰るよ」

「本当に今日はありがとうございました」

 機長と藤枝の二人は喫茶店を出て建物の外に出ていった。  つづく



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