198話 面接で聞かれること 21

第200章

 機長はここで残っていた和菓子をすべて食べてしまった。

「また少し話がわき道にそれてしまったが、ではいよいよ最後の質問。『北アフリカでのフランスの役目は何ですか』(Quel est le rôle de la France au Sahel?)」

「まさに政治的な質問ですね」

「そしてさらに『ここに介入することが本当に役に立ちますか』(Est-ce que c'est vraiment utile d' intervenir ici?)とね」

「こういう質問はどうこたえていいのかわかりませんね」

「この質問は、君たち日本人にはわからないと思う」

「わかりません」

「そこでフランスと北アフリカとの関係の歴史を説明する必要があると思う」

「何か関係があったのですか」

「そうだよ」

「ではお願いします」

「昔、北アフリカのアルジェリアはフランスが支配していたんだよ」

「アルジェリアですか。それは知っています。『シェルブールの雨傘』の映画の中で。この映画の中で主人公の女性と男性が別れてしまったのは確か男性がアルジェリア戦争に行くことになったからだったと思います」

「そうだね。男性がアルジェリア戦争に行くために二人は別れなくてはならなくなってしまったわけだね」

「こういう政治的な難しい質問、機長はどのようにこたえたのですか」

「私は次のようにこたえたよ。『私にはどうこたえていいかわかりません。ただ命令に従うだけです』という風にね」

「わからないことはわからないとはっきりこたえたのですね」

「ここで一番重要なことは、とにかくこたえることだと思う。わからないのならばわからなくてもいいから、とにかく何でもいいからこたえることだね」

「はい、わかりました」

「以上だよ。これで面接のときに質問されたこと。だいぶ時間がかかってしまったけれどね」

「ありがとうございました。とても役に立ちました」

「何の役に立ったのかはわからないけれど、君が満足してくれたのであれば私も満足だよ」   つづく



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