149話 垂直高跳び予行練習

第151章

「もうそれくらいでいいよ、あんまりやりすぎると本番でできなくなってしまうから」

「そうですね」

 藤枝は床から立ち上がった。

「次は垂直高跳びです」

「じゃあやってみて」

 藤枝は部屋の壁際に行った。そして壁に体の右半分が九十度の角度になるようにして立った。足を肩幅くらいに開いた。上方向を見上げた。右腕をまっすぐ頭の上に伸ばして指で壁に触れそのままの格好でじっとしていた。

「じゃあ跳んで」

 藤枝は太ももが床に平行になるまで腰とひざを曲げてしゃがみこんだ。そして腰、ひざ、足首を爆発させるように一気に伸ばした。跳び上がった。一番高く跳んだところで指を壁につけた。そしてそのまま床に戻ってきた。

「そうだね。いいね。それなら大丈夫だよ」

「そうですか。それはよかったです。あ、そうだ」

「なに」

「跳んだ高さ測らなかった」

「43センチ以上跳んだと思うよ」

「17歳女子の平均が43センチですからね。ですからもちろんそれ以上でないと」

「女性の最高記録は60センチくらいだったね」

「そのようですね。だからなにがなんでも60センチに近くまで跳ばないと。もう一度跳んで測りたいけれど、この部屋には何か測れるものないですしね」

「こぶしの大きさが大体10センチくらいだから,それで測ればいいよ」

「ではこぶしが五つ並べるくらいまでの高さを跳べばいいというわけですね」

「そうだね。ではもう一度跳んでみてごらんよ。測ってあげるから」

「じゃあお願いします」

 藤枝はまた壁際に行き、体の右半分を壁に九十度の角度になるように立った。そこへジャンヌがそばにやってきてしゃがみ込んだ。

「じゃあいいよ。跳んでみて」

 藤枝もしゃがみ込んだ。そして腰、ひざ、足首を一気に爆発させるようにして跳び上がった。ジャンヌは藤枝の足首のつま先が一番高く達したところまで床から、右手のこぶしと左手のをこぶしを交互に重ね合わせていった。

「なんとか五つ行ったよ」

「本当ですか、よかった」

「それなら本番でもなんとか行けそうだね」   つづく

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