132話 サーカスではない昇り方

第134章

「ではサーカスではありませんが、いよいよ本格的な練習に入りましょう。結び目のこぶがついてないロープを昇る練習です」

「よろしくお願いいたします」

「見ての通りこのロープには結び目がついていません。しかもこのロープに触った感じ、すべすべしています」

 藤枝はロープを両方の手のひらでつかんでみた。

「本当にすべすべしてますね。これでは手がかり、足がかりがなく昇っていくのが大変そうです」

「もちろんそうです。しかしコツがあります。そのコツをつかめば昇れるようになります」

「そういうものがあるのですか」

「はい、あります。それは足を使って昇る方法です」

「ロープには手がかりだけではなく、足がかり、つまり足をかけるところもありませんが、どうすればいいのですか」

「一言で簡単言えば、ロープを足首に巻き付けるようにして昇っていくのです」

「しかし両方の手はロープをつかまなくてはいけないため、足首にロープを巻き付けることなどできるのでしょうか。サーカスの人ならできるでしょうけれど。私はサーカス団員ではありませんし」

「手を使用してロープを足首に巻き付けるのではありません。足を使うのです」

「足で足にロープを巻き付けるということですか」

「そういうことになります」

「なんだかサーカスみたいですね」

「サーカスではありません。練習すればだれにでもできることです。そのやり方の詳しい説明は後でしましょう。今は全体の簡単な説明だけをします」

「はい、わかりました」

「下に垂れ下がったロープを片方の足首でもう片方の足首に下側から巻き付けるようにします。そうすればそこに体重をかけることができます。ですから昇りやすくなるわけです」

「まだ具体的なイメージがつかめないためわかりませんが、なんだかできそうな気分になってきました」

「大丈夫です。できますよ」

「そうですね、そうでないと私は困ります」

「このように話していただけでは意味がありません。さっそく練習をしましょう」   つづく

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