124話 次の練習の準備

第126章

 藤枝は疲れ切った様子であったが、それにがまんしたようにして言った。

「先生、次は垂直高跳びとロープクライミングの練習をお願いします」

「わかりました。しかしここで少し休憩しましょう。あそこに休憩室があるので少し休んでいてください。私は体育館に行って垂直高跳びとロープクライミングの準備をしてきますから。準備ができたら呼びに来ますから」

 彼女は休憩室に向かった。休憩室の中にはジュースの自動販売機が置かれていた。それとは別にレモン水が売店で売られていた。

「すいません」

「はい、いらっしゃいませ」

「このレモン水ください」

「はいどうぞ。かなりすっぱいので少しずつ飲んでください」

 藤枝はレモン水を受け取るとその場で一気に飲んだ。しかし思わず顔をしかめて

しまった。

「ほんとうにすっぱいですね」

「もちろんです。レモンですからね。しかも甘くしてはいませんからね」

「レモンの原液そのままですね」

「それにはわけがあります」

「どういうことですか」

「運動するときは大量の水分が失われます。ですから水分補給が大切です。しかし飲みすぎるのも禁物です。あまりたくさん飲みすぎると今度は体を動かしにくくなるからです。ですからもう少し飲みたいうと思えるくらいで我慢しておいたほうがいいわけですね。そこでレモン水が一番です。甘くしてはいけません。甘くしてしまうとおいしいため飲みすぎてしまうからです。ですからすっぱいままのレモン水が最適です。これならば飲みすぎる心配がないからです」

「そういうことでしたか」

「夏の甲子園大会の選手の中には、レモンをそのまま持っていく球児もいるようです。試合中なため大量に水を飲むことはもちろんできません。しかし全く飲まないわけにはいけません。そこでレモンです。レモンで水分を補給しながら試合にがんばっている球児もたくさんいるようです」

 その時、コーチがやってきた。

「では準備ができました。体育館に行きましょう」   つづく


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