118話 パリに行ったことがない
第200章
「ユキコはこの試験が終わったらどうするの」
「いったんパリに帰ります」
「アランと一緒にね」
「ドロンさんはどうするのかわかりません」
「パリか、いいね一度行ってみたいね」
「ジャンヌはパリに行ったことないのですか」
「ない。今まで一度もないよ。シェルブールで生まれて今までずっとシェルブールで育ったからね」
「ああ、確かに日本でもそういう人たくさんいますね。北海道、九州、沖縄で生まれ育ったため一度も東京に行ったことがないという人がです。高校の修学旅行で初めて東京に行ったという高校生もたくさんいますから」
「どこの国も同じだね」
「日本には、中には生まれて一度も東京に行ったことがないという大人もいるみたいです。地方で生まれて、その地方の学校を卒業して、その地元の会社に就職して、そこの地方で家を持って、一生そこで生活しているという大人がです」
「別に首都に行かなくても生活はできるからね」
「そうですね、やはり生まれ育った場所が一番いいと思います」
「でもあたしはやはり一度パリに行ってみたいね。パリってどういう街なの、教えてくれない」
「あたしが教えるのですか」
「そう」
「なんだか変ですね」
「どうして」
「日本人がフランス人にパリのことを教えるなんて」
「ユキコは実際パリからここに来たんだから、パリの街の中にいたのだから、あたしよりはパリのことよく知っているでしょ」
「確かにそうかもしれませんが」
「あたしはパリに行ったことが一度もないのだから、少なくてもあたしよりはユキコのほうがパリについてはくわしいでしょ」
「まあそうかもしれません」
「では教えて」
「そうですね、やはり大きな建物、ビルディングがたくさん立ち並んでいる街ですね。あたしはここのブレストにTGVという新幹線に乗ってきたんですが、パリのモンパルナスという駅で乗ったのです」
「モンパルナスの駅ね、ああ聞いたことがあるよ」
「その駅ビルというのがものすごく大きな建物でした。ブレストの駅の駅ビルというか駅舎の何十倍、何百倍くらい」
「すごく大きいんだね」
「はい。それに駅の近くにはモンパルナスタワーという超高層ビルがあって……」
この時、突然部屋の中の明かりが消えた。
「あ、消灯時間ですね」
「もうそんな時間か」
「ではもう寝ないと」
「じゃあ、お休み」
「おやすみなさい」 つづく
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