117話 シェルブールの雨傘

第119章

「これで明日の試験の対策が全部できました。体力試験も面接試験も」

「もうここまで来たらあとはやるしかないね」

「そうですね、今さらがんばってもどうなるわけでもありませんからね」

「そういうこと。あとは自分の今までやってきたことを信じてがんばるだけしかないよね」

「はい、明日は全力を出しきります」

「それがいいね」

「ジャンヌは明日の試験が終わったらどうするのですか」

「もちろん家に帰るよ」

「ジャンヌの家ってどこですか」

「シェルブール」

「シェルブールですか。ここのブレストの北東の方ですね」

「そう、ノルマンディー地方だよ」

「シェルブールといえば『シェルブールの雨傘』という映画がとても有名ですね」

「そのようだね」

「この映画にはエキストラとしてフランス海軍の水兵さんがたくさん出演してますね。あの赤い丸いポンポンがついたベレー帽(pompon rouge d'un béret de marin)をかぶった水兵さんです」

「水兵さんといえばシェルブールもここのブレストと同じく海軍の施設があるよ」

「どういう施設ですか」

「水兵さんを養成する学校(École des mousses) 16歳から18歳の生徒が入学する学校(la formation est ouverte aux jeunes de 16 à 18 ans) この学校はフランスには二つしかないんだよ。それが今あたしたちがいるここのブレストとあたしの実家があるシェルブール(il existe une École des mousses à Brest mais aussi à Cherbourg)」

「そういうことですか」

「あたしのシェルブールの中学の時の同級生の中にもこの学校に入学した生徒がいるよ」

「ジャンヌは中学生の時からシェルブールなのですか」

「生まれた時から。シェルブールで生まれて、小学校、中学校、高校までずっとシェルブール」

「ずいぶんいいところで生まれ育ったのですね。『シェルブールの雨傘』の映画を見るととても素敵な街ですね。あたしも今度行ってみたいです」   つづく

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