74話 次はジャンヌの番

第76章

 ジャンヌがいなくなり藤枝は一人で自分の面接の順番を待っていた。窓から外の景色を見たり、正方形のテーブルの上に置かれている飛行機の模型を見たり、こうして自分の番を待っていた。窓から見える景色、これは普通のことである。建物には必ず窓というものがある。そしてそこから外の景色が見える。当たり前のことである。しかしこの当たり前のことがとても重要になることがあるのだ。時間をつぶすために気をまぎらわさせるためにだ。もし窓というものがなかったらどうであろうか。壁を長いこと見ていなくてはならなくなる。しかしそんなことで時間をつぶせるだろうか。退屈で仕方ないと思う。しかし窓がありそこから外の景色が見れると、ある程度の時間をやり過ごせることができるものだ。たとえ平凡な景色であっても、全く同じ景色はこの世界には存在しないからである。地面の上に家が建っている。このような平凡の景色でさえ、世界中に一つしかないのである。全く同じ景色はないのである。

 正方形のテーブルの上に置かれている飛行機の模型。ジャンヌがいたときは、彼女との話で夢中になっていたためあまり気にもしなかった。しかし一人だけになると、急に興味をもち始めた。つまり目のやり場にちょうどいいということであった。そしてこの模型を細かく観察するように見ることによって時間をつぶすこともできるのであった。これでどうしてこの飛行機の模型がここに置かれているのかその理由がわかったのであった。おそらくこの飛行機の模型でも見ながら自分の順番が来るまで退屈しのぎをしてください、ということなのかもしれない。

 このようなことを考えながらいると、面接室のドアが開いた。そこからジャンヌが出てきた。彼女もそのままこのロビーの近くの階段を降りて行った。

「次は、藤枝有紀子さん」

「はい」

 彼女は自分の名前を呼ばれると椅子から立ち上がった。そして面接室のドアに向かって歩いて行った。   つづく

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