73話 アランドロンの面接終了
第75章
面接室から出てきたアランドロンは、ロビー近くにある階段で一階に降りて行った。
「ドロンさん面接うまくいったんでしょうかね」
「さあね、でもアランのことだからうまいことやり通したと思うよ」
「そうですよね、ドロンさんならどんなこと質問されてもうまくいきますよね」
藤枝とジャンヌが話をしていると、次の男子受験生が面接室の中に呼ばれた。
「女子は一番最後ですかね」
「それはわからないけれど、あたしは最後のほうがいいね」
「どうしてですか」
「気持ちが落ち着くから。最初に面接していく受験生たちを見ながら自分の面接の時の様子を想像していくわけ。自分も面接が終わってあのドアから出てくるとああいう表情になるんだなと思ったりしてね」
「それで落ち着くのですか」
「そう。落ち着かない理由は、わからないからだと思う。どうなるかわからない、だから不安になってしまうわけ。どうなるかわかっていれば、別に不安など感じないでしょ」
「確かにそうですね。どういう結末になるのかがわかっていれば、たとえそれがひどい結末であっても、前もって心の準備ができますからね」
「そういうこと。だからあたしはできれば一番最後から二番目に面接をしたいね」
「一番最後から二番目ですか」
「そう、そういう順番がベスト。あたしにとってはね」
「どうして一番最後ではなくて、その二番目なのですか」
「一番最後だと、面接官も特別の感情を持ってしまう恐れがあるから」
「どういうことですか」
「面接官の立場になって考えればわかると思う。今まで大勢の受験生たちと面接してきたでしょ」
「はい、それで」
「面接官は、『今、前にいる受験生がこれで一番最後か』と当然思うでしょ」
「確かにそうですね」
「だから。今までの受験生達には、そのような特別な思い入れはなく、ただ『次の人』という気持ちで対応しているだけでしょ。つまり事務的に接しているだけだから。だからこれから面接する受験生としても今までの他の受験生と同じ条件で面接官と接することができるから、気が楽というわけ」
その時、面接室のドアが開いて男子受験生が出てきた。そしてこの受験生も階段で一階に降りて行った。
「次は、ジャンヌさん」
「はい」
ジャンヌは名前を呼ばれると、すぐに立ち上がった。
「もうあたしの順番か、じゃ行ってくるから」
「がんばってください」
藤枝はジャンヌを見送った。 つづく
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