71話 ロビーで面接を待つ
第73章
藤枝とジャンヌの二人は、窓を背にした二人分の席に座った。すると、アランドロンは二人の席から約九十度の方向に置かれている窓を背にした椅子に座った。
「ジャンヌ、さっきのリスニング問題ですが、『17世紀に設立されたフランス海軍は、中世にさかのぼるprecursorsがあり』とかいう文章がありましたけれど、このprecursorsという単語がわかりませんでした」
「それは、先駆者という意味」
「あ、そういうことですか。つまり17世紀にフランスに海軍が設立されたけれどその前身は中世にさかのぼるということですね」
「そうみたい」
「17世紀というと1600年代ですね。日本では江戸時代という時代が始まったばかりのころです。そのころの日本に海軍というものがあったでしょうか?そのころヨーロッパでは海軍があったということは確かですね。スペイン、ポルトガル、イギリス、オランダの国の船が日本に来てたそうだからです」
「そう?もう日本に行ってたの?…… アラン、さっきから何きょろきょろしているの」
「ヘリコプターの模型がこのロビーにない」
「次のリスニング問題でしたけれど、ジャンヌ。『フランス海軍の空母パイロットはサロンドプロバンスの空軍基地で最初の訓練を受けて、その後アメリカ海軍の空母で訓練を受ける』とのことですね」
「そうみたいね。このことをもう少し詳しく言うと、一番最初の訓練は、もちろん今私たちがいるここ、ランベオックの海軍基地で訓練を受けるわけ」
「いまわたしたちが試験をうけているここ、EIP 50Sという初期パイロト養成校ですね」
「そう。ここでCAP10型機という小さいプロペラ機でね。今私たちがいるここEIP 50Sという初期パイロット養成校での訓練は、空母戦闘機パイロト希望者の訓練だけではなく、アランのようなヘリコプターパイロット希望者もここで訓練を受ける。ここでの訓練が終わったら、ヘリコプター希望者は陸軍で訓練を受けるけれど、飛行機希望者は、サロンドプロバンスの空軍基地で本格的な訓練の開始ということみたいね」
「では、ヘリコプター希望のドロンさんは陸軍で訓練を受けるわけですね」
「その時は君たちとお別れだな」と、アランドロン。
このロビーの壁にある青色のドアが開いて試験官が出てきた。
「これから名前を呼ばれた受験生はこの部屋の中に入ってください」 つづく
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