30話 知能試験対策セミナー
第32章
藤枝は知能テスト対策セミナーが行わられる会議室に着いた。受付の人に言った。
「このセミナーに出席したいのですが」
「でしたら今度は一週間後です」
「今出席できないのですか」
「今から始まるセミナーは最終回だからです。一週間後にまた新しいセミナーが始まります」
「今でないと間に合わないのです。一週間も先では遅すぎるからです」
「しかし今から始まるセミナーに出席する場合でも料金は同じ金額ですよ。安くはなりませんよ」
「それでもかまいません。ですからお願いします」
「わかりました。ではどうぞ」
彼女は会議室の中に入っていった。席に座ると先ほど買ったばかりの知能テストの本を開いて眺めていた。すると講師が入ってきた。
「では、始めましょう。今日がこのセミナーの最終回です。そこで今日は今までの復習をしていきましょう。それから、皆さんの質問も受けつけます」
講師は持ってきた資料を眺めながら講義を始めた。
「『1,2,3,4,5,?』 今こういう数字の列があります。では『?』にはどういう数字が入るでしょうか。これは常識でも簡単にわかりますね。『6』ですね。ではこれはどうでしょうか、『1,3,5,7,9.?』です。そこの女子高生の方わかりますか」
「はい、11です」
「よくわかりましたね。すごい。さすが毎日高校で学習されているだけあります。この数の並び方は『2』ずつ増えていく規則性があるわけです。ですから、『9』の次に来る数字は、『9』に『2』を足すことによってわかるわけです。このように、数字の並びを見てこれらの数字の並び方にはどのような規則性があるのかを見抜く問題、こういう問題が知能テストによく出されます。それではこのような問題に対応するにはどうすればよいのでしょうか。数字の計算は、足し算、引き算、掛け算、割り算の四つです。そのため、これら四つの計算方法を一つずつ試して計算してみること、これが基本的な考えです。それでも答えがわからない場合には、今度はこれらの計算方法を組み合わせてみることです」
「先生」
「はいなんですか、そこの女子高生の方」
「ドミノの牌を使った知能テストというものもあるようですがこれはどういうものですか」
「それは数字の時と比べてより視覚的になったということです。しかし基本は今説明した数字の配列の問題と同じです。数字がさいころの目に変わったということです。かずを数字という文字で表現しただけではどちらかというと抽象的です。それに比べて、数をさいころの目で表現するとより具体的になります。これはほかの数と比較するとよくわかります。数字で2と5で書いてある場合と、サイコロの目の『・』このような黒丸が二つ、五つある場合と比較するとよくわかります。数字の2と5を見比べてみても5のほうが2よりも大きい数であることが、見ただけではすぐにわかりません。ちょっと頭の中で考える必要があります。5だから2よりも大きい数なのだなという具合にです。しかし、サイコロの黒丸の場合は。黒丸が五つあるほうが二つある場合よりたくさんあると見ただけですぐにわかります。数字のようにちょっと頭の中でどっちが大きいのか考える必要は全くないのです」
彼女は、講師のドミノの説明が終わると、続けて質問した。
「知能テストはそのほかに図形の問題もあるようですが。これの対策を教えてください」
「はい。ドミノの問題でより視覚的になりました。今度は完全に視覚の問題です。それが図形の問題です」
彼女はこのようにして、講義を聞いていたが、いつのまにか寝てしまった。
つづく
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