29話 知能テストの対策をしないと

第31章

「起きなさい、藤枝さん」

「……」

「今は数学の時間ですよ」

「あー、そうだった」

「こんどの数学のテストで、もう少し頑張ってもらわないと」

「先生、高校で習う数学の問題と、知能テストに出る数学の問題とは同じなのですか」

「基本的な考え方は全く同じです。つまり物事を正しく論理的に考えるという点では全く同じです」

「ではどこが違うのですか」

「高校で習う数学は、公式というものをたくさん使用するという点です。しかし知能テストは、そういう公式というものは使用しないという点です」

「では知能テストを受ける場合にはたくさんの公式を覚えなくてもいいのですね」

「公式は覚える必要はありませんが、高校の数学も、知能テストも基本は全く同じなため、知能テストの問題を受ける場合には公式の代わりに、私たちが普段使用している言葉で考えていかなくてはいけません。ですから、高校の数学よりも、問題によっては知能テストのほうが難しいのです。高校の数学は公式を覚えていれば、問題の意味が分からなくても、公式にあてはめていくだけで答えが出てしまうからです。しかし知能テストには公式というものがないため、そういうことが出きないからです。問題ごとにその出題意図を理解していかなくてはならないからです」

「では知能テストを受ける場合には、覚えることがないため、どうすればいいのですか」

「問題を解くとき答えが合っていたからそれだけですぐに満足してしまうのではなく、どうしてそういう答えが出てきたのかその理由を考えることのほうが大切です」

 藤枝は高校が終わると、書店に立ち寄った。彼女は書店職員に尋ねた。

「すいません、知能テストに関する本ありますか」

「そうですね、これなどがいいかもしれません」

彼女は本の中をざっと見渡した。

「なんだか難しそうですね」

「でしたら知能テスト対策セミナーに出席したらどうですか」

「そういうものがあるのですか」

「はい、今ちょうどこのビルの最上階の会議室でセミナーが行わられていますので」

「そうですか、出席できますか」

「もうすぐ始まる時間ですので、行ってみたらどうですか」

「はい、では行きます」

 彼女はその本を買うと、ビルの最上階にある会議室へと向かった。   つづく



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