26話 外国語の学習は難しい

第28章

 藤枝有紀子は目を覚ました。部屋の中は真っ暗だった。彼女はベッドから起きると部屋を出てトイレに行った。トイレから部屋の中に戻ると隣のベッドで寝ていたジャンヌも起きていた。

「すいません、起こしてしまった?ジャンヌ」

「いいえ、さっきから眠れなくてね」

「今ね、明日の英語試験と人格試験の対策をしてきた」

「トイレの中で?」

「夢の中で」

「どんな対策してきたの?夢の中で」

「あたしの高校の先生にいろいろ聞いてきました。英語はねリスニング問題が多い試験は大変だろうって」

「それはそうでしょう。読解や文法問題だったら学習すればすぐ点数良くすることができるけれど、リスニング問題、こればかりは一日や二日ではどうすることもできないからね」

「それにしても、私たち人間はみんな同じ体の構造しているのに、つまり口の中の構造も全く同じなのにどうして違う音が出るのだろうかとても不思議です」

「人間の口ってほかの動物の口と比べて柔らかいでしょう。だからいろいろな形にすることができる、それでいろいろな音を出せるそうだとか」

「確かに人間以外の動物は、口がみんなかたいですね」

「そう、犬や猫を見ればわかるけど口は人間と比べて柔らかくないでしょ」

「そうですね、だからおそらく犬や猫は、フランスの犬や猫でも、日本の犬や猫でも、みんな同じ鳴き声でしょうね」

「犬や猫なら世界中どこへ行っても困らないね。どこの国の犬や猫ともすぐコミュニケーションができるから」

「だったら、人間も犬や猫のように口がかたかったらよかったかもしれませんね、そうすれば世界中全部同じ発音の言葉ができたかもしれませんから」

「そうすれば、英語の学習で苦労しなくても済んだかもしれないね」

「もっとも、口の構造が人間は犬や猫と違い柔らかかったから、いろいろな言葉というものが出せるようになった。だから複雑なことを考えたりすることもできるようになり文明や文化というものが発達したわけですね」

「おかげで難しい試験もできてしまった」

「どっちがいいんでしょうね」

「それで、人格試験の対策はどうだったの?」   つづく


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