12話 明日から試験パリからブレスト駅へ

第14章

「もしもし、お客さん」

「うーん……」

「着きましたよ」

「どこにですか」

「モンパルナスの駅ですよ」

「あー、そうだった!」

藤枝有紀子はバスの運転手に起こされた。彼女はスーツケースを持ってバスを降りて行った。彼女の目の前にはパリのモンパルナスの駅があった。20階くらいの高さのある駅ビルだった。南西方向に向かっている横長の建物である。駅ビルの正面にはモンパルナスタワーがそびえ立っていた。このタワーは縦長の超高層ビルだった。

 彼女はガラス張りの駅ビル正面入り口に入りプラットホームに向かった。プラットホームまでショッピングセンターの中をスーツケースを引きずりながら歩いて行った。しばらくするとプラットホームが見えて来た。彼女はプラットホームに入った。プラットホームの下にレールがひかれているが、コンクリートの床と枕木がそのままの状態の作りになっていた。普通レールがひかれているところは小石がたくさん敷き詰められているが、それらが全くないということである。プラットホームは[コ]の字型になっている。このプラットホームより東側にはレールがないのである。つまりこのモンパルナス駅は始発駅という意味の構造になっているのである。このモンパルナス駅からは西方向にレールが伸びているだけである。彼女がこれから行こうとするところ。フランスの一番西にあるところ。このレールの終点、ブレスト駅である。

 このプラットホームにはこれから彼女が乗る列車が止まっていた。TGVである。フランスの新幹線だ。先頭車の前面は屋根から下に向かって斜めに下りていき一番下でとんがった状態になっている。横長の直角三角形のような形である。日本の新幹線とほとんど同じスタイルである。パリからブレストまで3時間40分。ちょっとした旅行気分を味あうことができる。彼女は出発時間までまだ数分あるため駅の中の記念写真をとっていた。すると彼女がこれから乗るTGVのドアが閉まってしまった。大変なことになってしまった。これに乗らないと夕方5時までにブレスト駅に着くことができないからだ。   つづく

 

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