7話 受験のためマカロンのお菓子を提出

第9章

 藤枝有紀子は海軍担当者との一番最初の面接を終えて、軍情報採用センターの建物を出てエッフェル塔を見ながら地下鉄の駅に向かって歩いて行った。

「待ってください!藤枝さん!」

 彼女は驚き後ろを振り返った。すると軍情報採用センターの職員が彼女を追いかけてきた。彼女がEOPAN・FRの試験の手続きのことを説明してくれた迷彩式の軍服を着た職員だった。

「大変です!」

「どうしたのですか」

「あなたは、マカロンのお菓子を提出しましたか」

「あっ、忘れてました」

「どうしてですか、一番大切な提出物ではありませんか。これであなたが合格できるか決まってしまうのですよ。今ならまだ間に合います。早く提出してください」

「いつまでですか」

「今日のセンターの閉庁時間、18時までなら間に合います」

「わかりました。ではすぐ作って持っていきます」

「なるべく早くお願いしますよ」

 彼女は、これからすぐにマカロンを作らなくてはならなくなってしまった。マカロンのことを考えながら歩いていくと、近くにフランス洋菓子店があることに気が付いた。その店に気がひかれて見ていると、その店から日本人らしき女性が出てきた。

「あ、店長」

 藤枝はびっくりした。その店から出てきた女性は、彼女が日本でアルバイトをしているフランス洋菓子店の店長によく似ている女性だったからである。その女性は彼女に気が付くと彼女に向かっていった。

「どちらさまですか」

「店長ではないのですか、私が日本でアルバイトしているお店の」

「さあ、あなたの言っていることがよくわかりません」

「人違いでした、どうもすいませんでした」

「そうですか、それはいいですが、あなたもフランス洋菓子店で働いているのですか」

「はい、日本で働いています。マカロンを作っています」

「マカロンを作れるのですか」

「はい、毎日作る訓練しています」

「それはよかった。今あなた時間ありますか」

「いえ、これからすぐマカロンを作らなくてはならなくなったのです」

「それならなおさらよかった。ではここで作りませんか。今人手が足りなくて困っているのです。だからあなたがここで作ってくれたら助かるのですが。もちろんあなたがここで作ったマカロン、いくつでも持って帰ってもいいですから」

「本当ですか、それなら私も助かります。実は今すぐ作って18時までに持っていかなくてはならないところがあるので」

「では17時まで手を貸してください」

 藤枝は、店の中に入りさっそくマカロンを作り始めた。17時になると、彼女は店から出てきた。手にはマカロンが入った紙箱を持っていた。彼女はそれを持って急いで軍情報採用センターに向かった。

「すいません、マカロン持ってきました」

「間に合いました。よかったです。これであなたは合格できますよ」

 彼女は安心したため急に疲れが出てきて、センターの中にあるソファーで居眠りをしてしまった。   つづく





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る