6話 EOPAN・FRの最初の面接試験

第8章

「起きてください、藤枝さん」

「はい?」

「あなたの番ですよ、面接」

「あー、そーだった、はい、すいません」

 藤枝有紀子は、またパリの軍情報採用センターにいた。これから『EOPAN・FR』の採用試験の海軍担当者との一番最初の面接試験が始まるのであった。彼女はドアをノックした。

「どうぞ」

「失礼します」

「すわってください」

「はい」

 彼女は座るとさっそく質問が始まった。

「『EOPAN・FR』の志望動機を聞かせてください」

「『トップガン』の映画を見たからです」

「『トップガン』とはなんですか」

「昔の映画です。アメリカ海軍の空母のジェット戦闘機パイロットのです」

「どういう映画ですか」

「トム・クルーズ出演の映画です。空母のパイロットが活躍する映画です」

「ここはアメリカ海軍ではありませんよ。フランス海軍ですよ」

「もちろんわかっています」

「それでその映画を見てあなたはどうしたいのですか」

「自分も映画のように戦闘機を操縦してみたいと思いました」

「映画と現実は違いますよ」

「もちろんわかっています」

「ではどうしてですか」

「とにかくなりたいのです」

「戦闘機のパイロットにですか」

「そうです」

「女性のあなたがですか」

「なりたいものに女も男もありません」

「しかし厳しい職業ですよ」

「それはわかっています」

「それでもなりたいのですか」

「はい。私はTOEICで700点以上取るために英会話教室にも行きました。それに泳げるようになるために水泳教室にも行くことにしました」

「わかりました。では本日はこれで。後日今日の面接の結果が通知されます」

「ありがとうございました」

彼女は部屋を出て行った。すると外に次の面接予定者らしい藤枝と同じくらいの年齢の男が待機していた。彼は金髪の白人男子であった。彼女が彼のそばを通っていくと、彼は藤枝の後姿を眼で追った。

「アランドロンさん、どうぞ」

彼は今まで藤枝が面接をしていた部屋の中に入っていった。   つづく



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る