4話 EOPAN・FRの受験手続

第6章

 藤枝は自宅につくと、さっそくマカロンづくりを始めた。そこへ母親がやってきた。

「また、マカロン作っているのね」

「そう」

「本当に好きなのね」

「お母さん」

「なに」

「これから英会話教室に行くことにしたから」

「勉強する気になったのね、やっと」

「TOEICで、700点以上取らなくてはならなくなってしまったから」

『TOEICで700点以上?無理無理。今の高校のあんたの英語の成績、知ってるでしょ」

「でもどうしても取らなくてならなくなってしまったから」

「そう、ではがんばってね」

「それから、水泳教室にも行くから」

「水泳やりたくなったの?」

「やらざるをえなくなったの」

「大学、体育学部に行くことにしたの?」

「そうではないけど、体育系かもしれない」

 彼女はできたマカロンを持って自分の部屋の中に入っていった。彼女は、マカロンを食べながら『トップガン』の映画を見始めた。するといつの間にか眠ってしまった。

第7章

「起きてください」

「……あ、すいません」

「まだ説明すべて終わってませんよ」

「はい」

 彼女は、またパリの軍情報採用センター(CIRFA)[Centre d'information et de Recrutement des Forces Armees]にいた。迷彩式の軍服を着た職員がまた説明を続けた。

「ここでの申し込み手続き後、海軍担当者(le responsable du bureau Marine)との一番最初の面接があります」

「きびしいのですか」

「そうではありません。この面接はあなたが本当になりたいのかあなたの熱意を知るための面接です(un entretien de motivation)」

「もちろんそうです。TOEICで700点以上取るために英会話教室にも入りましたし、水泳ができるように水泳教室にも入りましたし、そして、お菓子のマカロンが上手に作れるように毎日訓練しています」

「面接のとき、その熱意を伝えてください。あなたがこれから提出する書類、これらは提出しただけではまだ事務的です。まだ生き生きとした熱意というものが伝わってきません。この生き生きとした熱意を伝えるのが面接の目的です。この面接をすることによってあなたがこれから提出する書類が生き生きとしたものになるのです(son but est de mettre une appreciation de votre motivation sur votre dossier)」

「わかりました」

「とにかく面接の時、飛びたいという熱意を伝えてください(montrez lui votre envie de voler)」

「もちろんです」

「海軍の知識を持っているとうまくいきます(une bonne connaissance de la Marine fera l'affaire)。艦船、航空機、潜水艦、軍備、任務、訓練課程などです(batiments,aeronefs,sous marins,armements,les missions,le cursus)」

 藤枝はさっそく受験の手続きをした。手続きが終わり軍情報採用センターの建物を出て、地下鉄の駅に向かって歩いて行った。エッフェル塔を見ながら歩いて行った。まもなく地下鉄の駅の入り口が見えてきた。彼女はそこの階段を下りて行った。プラットフォームで電車を待っていた。電車が来るとそれに乗り込み座席に座るやすぐに寝てしまった。   つづく

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